これまでもそんな女性達の恐ろしい戦いを嫌と言うほど見てきた優翔には珍しいことではなかった。
中には急に店に顔を出さなくなった女の子もいたほどだ。
諦めて抵抗しない優翔が逆に恐くなったのか、なかなかそれ以上力が入らない。
優翔が青葉の顔を見上げると青葉はゆっくりと手を離した。
「いいか良く覚えておけ、今回は見逃してやる」
脅せば優翔が泣きわめくとでも思ったのだろう。
あてが外れて少しつまらなそうだったがすぐに若いホストに呼ばれた。
「青葉さんお客様がお呼びです」
「別に俺が何かした訳じゃなくて、客の方から俺を気に入る分にはあんただって文句言えないんじゃねぇの?」
優翔は部屋を出て行こうとする青葉にそう言うと青葉はため息をついた。
「お前さぁ・・・ま、好きにしろ」
どうやら青葉は根っから悪い奴ではなさそうだ。
呆れながら優翔にヒラヒラと手を振った。
「けど、誰でも許されるってもんじゃねぇぜ。大体先輩に向かってあんたとか言わねぇだろ普通。妙に客扱いに慣れてると思えばこの業界に対して舐めてるような態度。お前よくわかんねぇけど、俺は嫌いじゃねぇな。ま、がんばれ」
優翔はクスッと笑った。
こんな商売に身を落とす奴なんか2種類しかいない。
根っから好んでこの業界に染まっていく奴、それから金が欲しくて手っ取り早く稼ぐため。
だが、前者なんか殆どいないと思う。
大体、水商売なんてそんな甘い考えで勤まるような商売じゃない。
女みたいに体を張るまではいかなくても、同じようなこともあるだろう。
優翔が元の客の席に戻ると青葉は客にべったりだった。
優翔に傾きかけた客も結局は青葉の方が良いらしい。
やはりそれだけ甘い世界ではないということだ。
青葉は客に高級なボトルを入れてもらい、アフターの約束をしていた。
しばらくすると別の客から指名が入ってその席を立っていったが、アフターを取り付けた客は変わりの優翔達でも抜け駆けはしようとはしなかった。
優翔は青葉の見事な手腕を見せつけられた様な気がした。
「優翔、こっちへ」
一番最初に声をかけてくれた光に呼ばれて席を替わる。
そこには若い女性達が3人ほど座っていた。
若いのに羽振りが良いのと派手な服装でキャパ嬢かソープ嬢だと優翔は思った。
そのうちのひとりの横に優翔が座った。
「っ・・!なに?!」
座ると同時に横の若い女性に股間を掴まれた。
「立派なもの持ってるじゃなぁーい」
優翔ははじめて赤くなった。
<「更待月」月の光6へ続く>
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