雫もすぐには動こうとはせずに両腕で羽根を抱えたままその頭に唇を押しあてながら何度もキスをしていた。
「あっ!」
ところが突然羽根が声を上げて飛び起きた。
「早く戻らないと兄さんが心配する」
さんざん時間をこの部屋で過ごしておきながら今更のように羽根が気づいて、ジャケットのポケットに入れっぱなしだった携帯電話を取り出した。
ホテルに着てからマナーモードだったから全然着信に気がつかなかった。
携帯電話の画面には何度も翼からの着信やメールが入っている。
この勢いだと捜索願でも出しかねない。
羽根は慌てて洋服を着始めた。
それをベッドに横になったまま雫はクスクス笑ってみていた。
「君の兄さんの過保護にも困ったものだね。これから俺は君を好きなときに誘えないのかな?」
と手を伸ばして届いた羽根のウエストに巻き付けながら引き寄せた。
その弾みに羽根の体がベッドの上に倒れ込む。
「ああん・・・雫さんだめですよ~兄さんのところに帰らないと」
「まだ俺には羽根が足りないなぁ~」
そう言って羽根の唇を塞いだ。それでも羽根は流されずに自分の体に言い聞かせながら雫から離れた。
「また後日ご連絡します。だから今日はもう勘弁してください」
「ほう、言うね・・・いいよじゃあ羽根からの連絡を待つことにするよ。そういうのも楽しみで良いね」
雫は急にニコニコにしながら羽根の体から手を離した。
羽根はその隙に雫から離れて服や髪を直す。
「さて、じゃあ俺兄さんのところに戻ります」
「ああ、羽根連絡待ってるよ。必ず連絡してね」
雫が片目を瞑ってウインクを送ると羽根は赤くなりながらドアを開けて出て行った。
「もしもし兄さん・・・あ・・ごんめ・・・うん」
すぐに兄の翼に電話をすると案の定翼の心配そうな声が電話口から聞こえてきた。
「羽根!どこにいるの?何で電話に出ないの?どこで誰と?まさかあの雫しかいう野郎と一緒じゃ」
翼はやはり羽根のことになると鋭かった。
羽根はしばらく言い訳を考えながら結局雫と一緒にいたことにした。
<「恋占い」シティホテルにて7へ続く>
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