物事はもっと楽観的に考えた方が良い出会いに恵まれます。どんなに不利な立場に追い込まれても気持ちよければ大丈夫です。
気がついた場所は病院のベッドの上だった。
寝ていたベッドの枕元に自分の携帯電話が置かれていて、それを手に取って開くといつもの占いが表示されていた。
信じたくないが最近よく当たる気がする。きっと、そんな風に考えること自体自分が弱っていからなのかと自嘲した。
しばらく虚ろな頭を巡らせてみると、意識が無くなる前のことを思い出して、ハッとして飛び起きる。
「つっ・・」ズキンという鈍い痛みが腰から下に響いて顔を歪めると
「どうなされました?無理せず横になっていてください」
誰の気配も感じなかった病室で静かな男の声がして、羽根はびっくりして声のする方を見ると、そこには長い髪を後ろでゆるく三つ編みしたスーツ姿の男が立っていた。
「誰?」
羽根が尋ねると男は羽根が座っているベッドに近づいて来た。
「金田朱鳥といいます。桧山様からあなたの世話をするよう言われました」
桧山様という言葉にカッと顔が熱くなった。
金田という男は羽根の体に手を伸ばすとその背中に手を添える。
ひんやりとした手の感触が羽根の背中を支えてくる。
まるで体温を感じられないような手だが、今はその感触が心地良いと思ってしまう。
「少し熱があるようですね」
支えていた片方の手を羽根の頬に添えて感情が読み取れないような水色の瞳で覗き込んでくる。
外国人?でも名前は日本人だな・・・ハーフとかクォーターなのかな?
羽根は不思議そうに金田を見ていた。
「大丈夫ですか?」
彼が羽根の視線に気づいて尋ねてくると羽根は慌てるように金田の手をそっと顔から退かした。
「あ、はい。ありがとうございます金田さん」
「朱鳥とお呼びください」
「朱鳥さん?」「はい、さんはいりませんよ」「朱鳥・・・なんだか照れくさいんだけど」
「すぐに慣れますよ」
はじめて見せた彼の笑顔に羽根は彼を朱鳥と呼ぶことにした。
「もう少し眠った方がいい」「でも」
ベッドに寝かしつけようとする朱鳥の手から羽根は体を起こす。
「仕事に行かなければ、いえ、せめて連絡をしないと」
「電話があるじゃないですか」
朱鳥にベッドの横に置かれている携帯電話を指摘されて、そうかと気がついた。
携帯の番号を確認するとすぐに会社に電話した。
「もしもし美津濃です・・・はぁ・・・え、はい。わかりました。失礼します」
電話の向こうで先輩の山田から今日は桧山商事の仕事で直行直帰という連絡を既に受けているから頑張れと言われた。桧山から連絡が入れられていたらしい。
面倒な説明をしなくて済むのはありがたかった。だが自分はまだ桧山の監視下に置かれている。そう思って朱鳥を見ると彼はまた表情がない顔で羽根を見下ろしていた。
「どうしました?」「あ、いえべつに・・・」「じゃあもう少しお休みください」「あ、はい」
羽根はとりあえずベッドに横になり、目を閉じた。
<「恋占い」病室にて2へ続く>
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