アサドは裸で横たわっているナジムを見つけると、
軍服の上着のボタンを外して椅子に座っていたカマールに殴りかかった。
「これは・・ご挨拶だ。ところで、本当のマラーク王子はどこです?」
鋭い視線を細めながらアサドはカマールを睨んだ。
「何のことをおっしゃてるのやら。こんなこと許されるとでも思っていらっしゃる訳じゃないですよね」
「よく似ている。いや、本物よりもよっぽど色香が増している。おかげで俺としたことが歯止めがきかなかったぜ」
その言葉にアサドがカマールの襟首を引き寄せた。
「いいだろう。今はまだ黙っているとしよう」
カマールは唇の端から流れる血を手の甲で拭った。
「あなたがどう思われようと勝手ですが、そんなことをべらべらと喋るような方ではないと私も認識しています」
アサドは裸で横たわっているナジムにかけられていた、カマールの上着を取ってカマールに投げつけて、自分のまとっていたシルクのヴェールをナジムにかけ直した。
カマールは肩を上げると首を左右に振った。
「どうやらあんたもその王子様もどきにご執心なようだな」
ナジムを抱き上げようとするアサドにカマールはナジムに近づいた。
「わかるぜ、王子様もどきはすげぇ良かったぜ。こっちも大人げなくなっちまうくらいだったからな」
アサドは両腕にナジムを抱いてなかったらもう一発殴りたかった。
その思いを込めながらカマールを睨みつけた。
「おっと、恐い目だな。だがお前だって俺がしたことをしたいと思ってたんだろ?隠さなくても良いって、誰でもきっとそう思うぜ」
カマールはナジムの顔を見つめた。
アサドはナジムの顔を自分の肩に押しつけながら立ち上がった。
「あなたがしたこと、監禁、陵辱に関する沙汰は追って連絡する」
カマールはアサドを見上げてニヤリと笑った。
「そんなことをすれば王子様の秘密もバレるけど」
しかしアサドはもう何も言わずに部屋を後にした。
ナジムの体に残された痣に唇を噛みしめた。
「くそっ!!遅かったか、こんなことなら私がお前を先に抱いていれば良かった」
だがすぐに口元を意地悪く上げる。
「覚悟してください。私があの男の痕跡を全て塗り替えてあげましょう」
ナジムは車のエンジン音が聞こえて目を覚ました。
横たわっていた視線の上にアサドの冷たい顔がある。
多分アサドの膝の上に寝かされたいるらしい。
起き上がろうとして、すごい痛みが腰に走った。
「つっ・・・」
その声にアサドが見下ろしてナジムの肩を押さえつけた。
「無理しないでください。そのままで結構です」
車が城に到着してもナジムはアサドに抱きかかえられて部屋まで戻った。
すごく恥ずかしかったが、アサドの冷たい表情に何も声をかけられなかった。
ようやく部屋に戻るとベッドの上に下ろされた。
背を向けたアサドにどうしたらいいのかわからず、ナジムは手を伸ばした。
「あの・・・」
その声に振り向いたアサドはいつにも増して無表情だった。
読了、お疲れ様でした。
web拍手をありがとうございます。
いつもBLとか読みながら、どうして危機一髪でヤられないのだろう?
という欲求があり、こんなことになりました。
ナジムごめん^^;