商人は後ろに引いてきたものの袋を取り除いた。
そこには大きな鳥籠のようなものが現れた。
よく見ると中には生き物らしいものが入っている。
マラークも興味深げにその中をよく見つめてみると、なんとその姿は紛れもなく人間だった。
何も身につけずに全裸のまま手首のみを鉄の手錠で拘束されている。
その容姿は色白で一瞬、羽をむしり取られた天使かと思うほど中性的な少年だった。
マラークと同じくらいの男子・・・だか良くみつめていると
王もマラークもハッと息を飲んだ。
「・・・!」
「どうです?まるで王子様です。私はここに来るまで、てっきりマラーク王子様だと思っておりました。競売でとても高値で入札したのですが、マラーク王子様はこちらにおいでとなれば、この子はあなた様の隠し子ではないかと思いましてね。でも、この瞳では売りに出すしかなさそうです」
と商人は籠の中の少年の顎を掴んで上向かせた。
彼の体もマラークと同じ肌の色でその瞳だけが片方がブルー、もう片方がイエローからブルーがかったオッドアイだった。
「オッドアイとは不吉な・・・だか惜しい・・・」
王がたまに妖しい目を自分に向けられていることをマラークは知っていた。
「王様が買い取ってはいかがです?」
とマラークは微笑みかけた。
この国ではオッドアイは不吉の象徴とされている。
そのことを承知の上でマラークは王に持ちかけてみた。
目に入れても痛くないほど寵愛しているマラークに、そう言われると
王も悪い気はしなかった。
それにこれはマラークではないのにマラークと瓜二つ・・・カラーコンタクトを入れさせてしまえばオッドアイだとバレたりもしないだろう。
私の側で可愛がるのも悪くはないぞ・・・と王がひとりニヤついた。
それから商人に向き直った。
「いくらだ?いくらならこれを売る?」
商人はその言葉を聞いてニヤリと笑った。
どうやら最初から気づいていて王に売りつけるつもりで連れてきたのかもしれない。
マラークは籠の中の彼を見つめて、彼の目元が真っ赤になっていることに気がついた。
さんざん泣いたあとをとても気の毒に思った。
「かわいそうに・・・」
マラークが呟いた。
「どうしてもそれ以上負けないのならば、カラーコンタクトをつけてこれの目の色を統一させろ」
どうやら王と商人の商談がまとまったらしい。
商人はカバンからブルーのコンタクトレンズを取り出して、消毒しながら彼の腫れぼったい目につけた。
その姿を見て王はため息をついた。
「おお、私の天使そのものではないか・・・」
どこか陶酔しきった王の顔にマラークはゾッとした。
実の父親が、自分をこんな欲望の目で見ていたことに初めて気がついた。
そして気の毒なのは籠の中の裸の少年。
マラークはまるで自分の分身の様な彼のことを救い出してあげようと、この時心に決めていた。
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