王の部屋へ通された一行はガーリブ王に直接出迎えられた。
「王様ご無沙汰しておりました」
こうして間近に寄ってみても、王はナジムだとは気づかなかった。
王には失踪したのがナジムの方だと報告されていたため、全くそれを疑おうとはしない。
何よりも信頼しているアサドがそう言うのだからカーリブ王は疑うはずもなかった。
「今日も麗しい」
必要以上に我が子の体にスキンシップするのをアサドは少しだけ目を細めながら見つめていた。
ナジムは親子なんだからこのくらいは当たり前だと思っていた。
一歩後ろでカマールは軽くため息をついていた。
王の護衛であるカマールには王が男だろうと女だろうと見境なく好みの者には熱心であることをよく知っていた。
「さぁ、こっちでよっくり休むと良い」
王は隣の部屋を指し示した。
アサドはナジムの変わりに
「わざわざありがとうございました。」
と丁寧におじきをすると
「さぁ」
とナジムの腕を掴んで王の前から連れ出していった。
王の前から立ち去っていくふたりを見送ってからカマールが王の前に跪いた。
「それでどうだ?」
さっきまで目尻を下げていかにも人の良さそうだった王が別人のように見える。
「はっ、どうやらアサドはかなり酷い仕打ちをしているようです。最もマラーク様自体もそれを嫌がってはおられないようですが・・・人には色々な性癖をもたれている方達がいらっしゃいますし・・それほど警戒するにあたりません」
「そうか」
カーリブ王はぎりっと奥歯を鳴らした。
息子でありながらいつかその身を自分のものにしようと企んでいる王は、表向きはとても優しい。だが、一皮剥けば人でなしだった。
ナジムはマラークがまだいた頃にさんざん王の相手をさせられていた。
それでも最後まではされてはいなかった。
もう高齢なので無理なのかもしれない。
だが、人がマラークを泣かせる様でもこの王には楽しみの一つになっていた。
一番最初に軍事指揮官であるカマールがナジムを陵辱したのはその映像を王に届けるという任務だったのだ。
そのことはアサドも知らない。
実はふたりが通されて部屋にもカメラがあった。
そして今ふたりは監禁状態で、中からドアは開くことができなかった。
「アサド、ここのドア開かない」
「そんなバカな・・・」
まんまと王の策に落とされたことをアサドは悔しく思った。
だが、隠してあったカメラに気づいていた。
それを知っていてわざとらしくマラークの唇を奪った。
まるで自分のものを見せびらかすように、何度も角度を変えて一層奥へと口づけていった。
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