マラークが目覚めると昨晩のことが嘘のようにベッドもマラークの体もきれいになっていた。
あれは全て夢だったのかもしれない。
カミールにあんなこと聞いたから変な夢を見たに違いない。
マラークが体を起こそうとすると腰がジンジンとして、股間がヒリヒリして動けなかった。
「夢じゃないのか・・・」
「ああ、無理するな。初めてにしてはよくできたな」
スティーヴンは窓辺に腰掛けてティーカップを手に微笑んだ。
こんな風にしてると英国紳士に見える。
いや、本当の英国紳士なのかもしれない。
「起きられるならお茶はいかが?」
「おう、いただこう」
マラークはゆっくりと体を起こしてベッドの下に足を下ろすと立ち上がった。
ジワリと尻の周りが熱くなった。
こんな感覚は生まれて初めてだが、スティーヴンの前でだらしない格好などしたくなかった。
いつの間にか着せられていたシルクのガウンで部屋の中央に置かれている大きなソファにゆっくりと腰を下ろした。
スティーヴンがパチンと指を鳴らすと、部屋のドアが開いてきちんとスーツを身にまとった若い男がティーポットとカップが乗っているワゴンを押して入ってきた。
マラークの前まで来るとティーカップにコポコポと良い香りのアッサムティーを入れてくれる。
「どうぞ。お熱いのでお気をつけください」
彼は跪いてティーソーサーに乗せたカップを差し出した。
「ありがとう」
マラークがカップを受け取ってゆっくりと口に運ぶ。
「ん、おいしい」
微笑んだマラークを見つめながら彼は一歩後ろに下がった。
そこに窓別からスティーヴンがソファーへ移動してきた。
「紹介しておこう。彼はシルフィ俺の執事だ。今日から君の世話をしてくれるから不自由なことがあったら何でも言ってくれ」
シルフィは軽く会釈をするとワゴンを引いて部屋を出て行った。
「私はお前の奴隷ではないのか?」
マラークがスティーヴンを見つめる。
スティーヴンはフッと笑った。
「どこの世界に主と優雅にお茶を飲む奴隷がいる?それとも奴隷扱いがお好みか?」
「フンッ、誰が。お前こそこのお茶・・・私のためにわざわざ取り寄せたのであろう」
マラークがティーカップの中を覗き込んだ。
「さすがは・・・お育ちは隠せないようですね。最もその気品があるから俺はあんたを買ったんだけどな」
スティーヴンがマラークの顎をつかんだ。
ゆっくりとマラークはその手を払う。
「なるほど。それでお前は私の素性を承知の上で買ったのか?」
だがスティーヴンは首を横に振った。
「知らない。別に興味もない。ただあんたに興味があるだけだ。なぁ天使の羽根はどうした?」
スティーヴンの右手がマラークの背中を上下に撫でた。
それだけでマラークは背中からジワリと熱くなった。
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