雅秀は光長をシートに押し倒していた。
きちんとボタンを絞めたYシャツをめくり上げると光長の白い肌を露出した。
所々に残るロープの後が少し痛々しい。
だが、雅秀は光長の桃色に色づいた乳首に吸い付いた。
「やっ・・やめ」
「こっちはどうかな」
片方の手でスラックスの前に触れる。
「なんだ」
光長の反応がないことを確認するとつまらなそうにそう言った。
「それならその気になればいい」
ニヤリと口元を上げた顔はいつもの意地の悪い男の顔だった。
「あっ・・よせっ」
雅秀は躊躇うことなく光長のスラックスの前を開くと下着の上から雄に触れる。
唇は変わらずに胸の尖りを啄んでいる。
光長は押さえ込んでいる雅秀をはねのけようとして、ふと芳生の言葉を思い出した。
『抵抗すればするほど押さえ込みたくなる。その顔がたまらない』
だが抵抗しなければこの行為を受け入れたことになるだろう。
それは違う。雅秀のことは最初から認めてはいない。人格とか、性格を知る前に体を知られた相手・・・生まれて初めて男に抱かれた相手。
絶対に受け入れることなんてできない。その後でどんな人格者だとわかっても、仕事ができる男だと知っても、万が一に好きになったとしても・・・
光長は雅秀の顔をじっと見つめていた。
「ふんっ」
雅秀は光長の視線を感じて鼻を鳴らした。
光長はその人をバカにしたような態度にカッとなった。
「いい加減にしろ」
光長は雅秀を弾いた。
ドンと列車の床に雅秀が落とされる。
雅秀はゆっくりと起き上がりながら、光長を見てニヤニヤしていた。
「言いたいことがあればはっきり言え」
光長はそう言ったが雅秀はにやけた顔で
「別に」と言うともう一度光長の横に座った。
そのまま強引に押し倒すと、両手をまたネクタイで縛られた。
「お前ってさぁ、つくづく縛られるの好きなんだと思っただけだ」
光長は力で男にかなわないことが悔しかった。
<「弦月」特急列車にて3へ続く>
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