着物姿に曲げを結った雅秀は光長の着物をまくり上げて真珠の玉を手に持っている。
それを一粒光長の蕾に入れながら意地悪く口元を歪めて笑った。
光長は異物が入り込む違和感でもだえ苦しんでいるが真珠を入れたまま雅秀の楔で貫かれ、光長は堪えきれずに達してしまった。
その唇を優しく雅秀が吸いながら光長は涙を流していた。
潮風が冷たく感じて目を覚ますと雅秀は隣でなぜかコーヒーを飲んでいた。
また雅秀の夢を見た。気がつくとちゃんと服を着ている。
「飲むか?」
缶コーヒーを渡されて受け取るとひんやりと冷たい。
体を起こして缶のふたを開けた。
「また夢を見た」
光長が雅秀にそう言うと雅秀は口元を上げた。
「何か思い出したか?」
光長はその言葉に首を横に振った。
「そうか」
雅秀はそれ以上は何も言わなかった。
手に持っている水晶玉の数珠はさっきまで光長の体に入れられていたものだ。
その感覚を思い出すと体が熱くなりそうで光長は視線を逸らした。
正面の青い海を眺めていると清々しい風か通り抜けていく。何か懐かしいような気がしする。
缶コーヒーを一口含むと喉が渇いていたことに気づいた。
一気にそれを飲み干していた。
雅秀は光長に気を遣っているのかなかなか立ち上がろうとしない。
「仕事行かないのか?」
光長の方が心配になり雅秀に尋ねた。
「ああそうだな」
雅秀はようやくシートから立ち上がった。右手を出されてそれにつかまると、雅秀の腕の中に入っていた。
光長はなぜか頬が熱くなる。何を今更と思われるかもしれないが、こんな風に自然に抱き合うと非常に照れくさい。
そうだ雅秀にはいつも突然酷い目にあわされるが、優しくされた記憶がない。だから自然な行為はすごく照れくさいのかもしれない。
「いつまでそうしているつもりだ。もっとして欲しいのか?」
意地の悪い言葉をかけられて光長は現実に引き戻された。
(ああやっぱり、いつもの意地の悪い男だ。少しでも優しいなんて思った自分はバカだ。どうかしている)
光長は慌てて雅秀から離れると雅秀はシートを払って畳んだ。
「さあて、行くか」
雅秀の声がちょっとつまらなそうに聞こえたのは気のせいだろうか。
2人はまたタクシーを拾って今度こそ支社に向かった。
<「弦月」支社にて1へ続く>
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