それに気づいた翔太がようやく唇を離した。
「悲しいな、そんなに拒まれるなんて。君はもう男を知っていると思ったんだけどな。もしかして誰か好きな人がいるの?」
光長は黙って翔太をみつめている。
「もしかして一緒に来た森本って人・・ああ彼都会っぽくてかっこいいよね」
光長は慌てて首を横に振った。
「違う。そんなんじゃない」
そう言いつつ顔がカッと赤くなったのを翔太は見逃さなかった。
「俺はいいよ。君が誰を好きでも関係ない。相手さえしてくれればさぁ、今日とは言わないからいる間、1回ぐらい考えてくれないかな?」
翔太は強引に光長を押し倒そうとはしないらしい。少しホッとしたが、それでも今度は合意を求めてきた。体だけだったらここへ来る前に相当酷い仕打ちも受けた。
最も殆ど記憶にはなくて、体に残された痕や痛みでそれがわかるくらいなのだが・・・
光長は曖昧に笑った。
「それより良い匂いがしているんだけど、飯食べたいな」
光長がくんくんとテーブルの方向を見ると翔太は出会ったときのように少年のような爽やかな笑みを浮かべた。
「ああ、すっかり忘れてたよ。冷めないうちに食おうぜ」
と立ち上がって光長の手を取った。
まるで女性でもエスコートするように手をつないでテーブルに置かれているイスを引くと光長を座らせた。そして自分も向かい側の席に座った。研究室の中とは思えないダイニングセットに光長は驚いた。丁寧にテーブルクロスまで敷いてある。
「さぁ、ぞうぞ」
「それじゃあお言葉に甘えていただきます」
光長はスープにスプーンを入れて口を付けた。
「うまい」
思わず口にして他の皿に盛られている肉料理にも箸をつけて口に運んだ。
翔太の顔を見てニッコリと微笑む。
「君、その顔は反則だよ。俺に押し倒されたいのか?」
翔太も口に運びながら光長の幸せそうな笑顔を見て思わずそう洩らした。
「だっておいしい。こんなに美味し物食べるの均ぶりだなぁ。ね、僕ここにいる間ずっと翔太の料理が食べたい」
光長は瞳をキラキラさせながらそう言うと翔太は腕を組んだ。
「俺は研究者だから忙しいんだ。でも君の頼みだからなぁ~条件をだしてもいいか?」
「体のことだったら・・・」
光長が赤くなって俯くと翔太は笑った。
「そんな卑怯なことは言わないよ。ただここにいる間は俺と一緒に寝食を共にするというのはどうだ?」
なんだか恋人同士の約束みたいで逆に照れくさい。
光長は更に頬を赤くして頷いた。
「そういうことなら」
「だが、それで自然に何かが起きても俺は知らないけど」
結局そう言う目的でも光長の中では笑って流せる会話だった。
「いいよ」
<「弦月」翔太の部屋にて1へ続く>
にほんブログ村
読了、お疲れさまでした。
web拍手をありがとうございます。
PR