そろそろ彼女たちが席を立ちはじめた。
3人がそれぞれ好みのホストを指名した。
そしてバラバラに店を出て行く。
優翔も彼女と一緒に出ようとしたところで
「ちょっと待て!」
入り口付近から聞いたことがある男の声がした。
「俺が買った」
ズカズカと店の中央まで来た男は仕立ての良い高そうなスーツに身を包んでいる。
トランクをガラスのテーブルに置くとそれを開いた。
「お客様?」
店長の和真がその男の前まで来ると顔を見動きが止まった。
「てめぇ、鳥取の・・・」
優翔が人混みをかき分けながら彼の前までやってくる。
「優翔」
彼が店に入ってきた瞬間から優翔にはわかっていた。
クスッと笑うとテーブルの前でやけに男らしくしかめっ面をしていた彼の顔を見た。
「月深・・・無茶しやがって」
彼が置いたトランクを黙って月深に手渡す。
「こんなものいらねぇって言ってるじゃねぇか」
優翔は振り返ってさっきまで一緒にいた客に頭を下げた。
「どうしても外せない野暮用ができてしまいました。今夜の続きは次回までのお楽しみにしていただけませんか?」
相手の機嫌を損ねないよう、彼女の手を取ると跪いてその手にキスをした。
彼女はうっとりとしてから
「そうね、楽しみは後に取っておくのが好きだから。今日はいいわ」
と他のホストと一緒に店を出て行った。
他の客やホストもバラバラと席に戻っていくと、優翔は月深をボックス席に案内した。
「いらっしゃいませ」
黒服が飲み物やおしぼりを運んでくる。
「呼ぶまで誰も来なくて良い」
月深がそう言うと他の従業員はその席から離れていった。
完全に個室のように奥まったボックス席で月深は優翔に抱きついた。
「探したんだぞ・・・」
だが優翔は何も言わず月深の顎をとらえてじっとその瞳を見つめる。
やがてその唇は月深の唇に重ねられた。
ゆっくりと重ねられた優翔の唇は甘く月深を溶かしていく。
ぐったりと沈み込む高価なソファに身を沈める。
優翔の口づけはどんどん深くなっていった。
<「更待月」月の光8へ続く>
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