目に入れても痛くないほど可愛がっているとはこういうことだろうか・・・
アサドの目の前にいるのがあの優秀なガーリブ王とは思えないほど、マラークという幼い王子にメロメロだ。
公務ではほとんど笑顔も見せず、気むずかしそうな顔をしている王がこの小さな男の子の前ではニコニコと笑顔を絶やさない。
確かに他の多くの王子や王女達と比べると、欧州の血が混じったマラークは色が透けるように白くて髪の色も金色、瞳も海を思わせるような濃いブルーだった。
ひとつひとつが宝石のようにキラキラと輝いていた。
「アサド?マラークですよろしくお願いします」
その小さな王子に笑顔を向けられてアサドは驚いた。
こんなにも天使のように純粋無垢な人は見たことがない。
幼かったアサドの弟や妹たちでさえ、こんな風にきれいではなかった。
アサドは光を見るような眩しさを感じて目を細めた。
「アサドどうしました?」
ガーリブ王が言葉を失ったアサドに声をかけると、アサドの手に小さな手が繋がれた。
「ねぇ、王様アサドとお部屋に行ってもいいでしょう?」
マラークはアサドの手をぐいぐい引いていた。
「ああ、私は残念ながらこれから抜けられない用事があるから、アサド、マラークのことを頼みました」
「御意」
アサドは王に会釈するとマラークの小さな手がまたアサドの手を引っ張った。
「早くはやくぅ~」
アサドは王がどうしてこの子だけには特別なのがわかるような気がした。
アサドの顔を見上げたマラークを思わず抱き上げた。
「私があなたをお部屋までお連れいたしましょう」
だがマラークは拳でアサドの背中を叩く。
「ダメダメ、私は自分の足で歩くのです。アサドは一緒にいてくれれば良いんですよ」
抱き上げて近くでその顔を見つめていると吸い込まれそうになる。
フラフラとその頬に自分の頬を押しつけてみた。
すると、マラークはケラケラと笑い出した。
「もう、アサドってばくすぐったいから早く離してください」
その言葉にようやく我に返るとアサドはマラークを下ろす。
「これは大変失礼を・・・」
「だめ、アサドは罰として今日は私と一緒に寝るんだよ」
思わず笑みがこぼれそうになるのをアサドは懸命にこらえた。
「わかりました」
アサドが恭しく小さな王子の前に跪くと、マラークはまたぐいぐいと手を引っ張った。
「だから早くお部屋に行きましょう」
アサドはマラークに連れられて部屋に行った。
マラークの部屋はこの城の最上階にあった。
このブルザード公国が一望できるほど眺めが良い。
美しいこの国は優秀な王のおかげで豊かだった。
国交も開けており、農業、産業も盛んで資源にも恵まれていた。
宝石類もたくさん取れるため、マラークの部屋のところどころには大きな宝石もちりばめられている大変豪華な部屋だった。
だが、マラークはどこか寂しそうだった。
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