「お前はいつでも私にそんな口をきくがいつまでも私がお前を放っておくと勘違いしているようだな」
「あんたみせのもんに手をつけちまったらまずいんだろ」
花梨はそう言って芳生を上目遣いに睨んだ。
「ふうん、お前は私のことをわかっていないようだね」
芳生はそう言ってから花梨の手を離すと立ち上がって部屋の障子を閉めに行く。
窓の光を遮られると昼間だというのにこの部屋だけが薄暗い空間に変わっていった。
花梨は少し怖くなって入り口の近くまで体を滑らせた。
芳生はすべての障子を閉め終わると花梨に笑顔を向ける。
「さて、お前にその名前の訳を教えてあげようね」
花梨の側まで来ると芳生は花梨の大きな瞳を覗き込んだ。
生意気だが顔は女の子のようにきめの細かい白い肌とふっくらとした誘うような赤い唇をしている。
芳生はその頤(おとがい)をつかんで花梨の顔を見つめている。
花梨の瞳が伏せられると、程なくして柔らかいものが花梨の唇に触れた。
最初はふわりと塞がれた唇に芳生の舌が花梨の唇をノックするように触れる。
花梨がわずかに開いた唇の隙間からするりと芳生の舌が花梨の口の中に入り込んできた。
花梨の瞳が驚きに見開かれると、間近には端正な顔立ちの若い経営者の顔があった。
凛々しい眉と少しつり上がった目尻に普段は優しいが意志の強さが感じられる。
「・・あ・・・」
芳生が少しだけ離れた隙に花梨が小さく声を漏らす。芳生はそれでも花梨の唇を解放せずにその口の中に別の生き物のように動きまわる舌を歯の裏側や花梨の舌へと絡ませる。
花梨が気づくと大きく口を開けて芳生の口づけを受けていた。
もうその体からかは力が抜けてぐったりとしている。
ようやく芳生が花梨の唇から離れると花梨は畳の上に横になっていた。
「さて、私に君の値踏みをさせてもらおうか」
芳生は立ち上がると文机の引き出しから何かを持って戻ってきた。
ちょうど親指くらいの太さで筆くらいの長さの棒であったが先が軽く削られている。
「これで慣れない子達は私が上手にならしてあげたんだよ。お前もきっとすぐに良くなるから安心して私に全てを任せるといい」
口元を上げて微笑む芳生はやはり花梨の目には魅力的に映っていた。
<「梨の花」3へ続く>
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読了、おつかれさまでした。
web拍手をありがとうございます。
思ったよりも長い話になっています。。。m__m
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