すっかり日は高く昇っている。
優翔は月深がさらわれたことで眠気を忘れていた。
店はやっていなかったがもしかしたら誰かいるかもしれないと思いながらドアに手をかける。
ドアノブを回すとドアが開いた。
こんな時間にいるとすれば多分オーナーか店長あたりだろう。
他に人がいなければ、逆に都合が良い。
優翔が事務所の前に立ってノックしてみた。
返事はなかった。
「いないのか?おい!誰かいるか?!」
声をかけながら事務所のドアを開けた。
デスクには誰も座っていない。
優翔は部屋を見回した。
すると奥のソファーの背もたれから誰かが横になっているのが伺えた。
「失礼します」
もう一度声をかけるとそファーに横になっていた人物が起き上がった。
「ん~誰だ?」
あくび混じりに乱れた髪を掻きながらゆっくりとこちらに顔を向けてきた。
「店長?」
店長の和真が上半身裸のままで優翔を見た。
「なんでぇ、こんな時間に・・・早く出ていけ」
まだ眠そうに目を細めながら片手でしっしと払う。
「すみません、ちょっと急用で、お聞きしたいことがあるんですが・・・」
「どうした和真・・・」
もうひとり和真の横にいたらしくその男が目を覚ました。
その男の片腕が和真の頭に触れる。
こいつら・・・こういう関係だったのか・・・・
もうひとりの男は猿島組の嵐だった。
嵐は「あっ!」っと小さく呟いてからしかめっ面をした。
「こんな早く来るんじゃねぇ!!」
こんな場面を見られて言い訳が出来ずにとりあえずそんなことを言った。
「そんなことより」
優翔はソファに一歩近づくと
「話ならそっちで聞くから座って待ってろ」
と和真が服を纏う。
嵐の背中にもシャツを掛ける姿になぜか月深が重なった。
<「更待月」月の砂6へ続く>
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