まるで何事もなかったように普通に営業されていた。
「あ、優翔」
声をかけた東間の隣に見知らぬ男性客が座っている。
よく見るとその奥に太陽も座っていた。
「木星兄貴」
月深の言葉で全て納得した。
どうやら賢い木星が太陽の気を静めてくれたらしい。
その太陽は月深の顔を見た瞬間しまりのない表情になっていた。
「太陽兄貴も木星兄貴も一緒だったのか」
「いや、俺はたまたまここに立ち寄ったんだけど、何やら兄貴が大声出してたから」
「月深もここに座りなさい」
太陽にそう言われて月深が座ると太陽の顔はますますにやけた。
店の奥から様子を見ていたオーナーの和真も苦笑する。
「月深・・・俺はお前が何をしても自由だと見逃してきた」
早速太陽は月深に気になっていたことを言い出した。
月深も流石にまずいと思ったのか俯く。
その手にクマのようなゴツイ手を乗せてぎゅっと握った。
「だが、こんな稼業だ。流石に競争相手に軍配を渡すような真似だけは避けなきゃいかん」
太陽は調子に乗って月深の指先を自分の口元に運んで口づけた。
「あまり言いたくはないがいくらお前でもやっちゃいけないことをしたときは制裁を与えないとならん」
月深が少しだけ驚いた顔をした。
そこに木星が口を挟んできた。
「もう、兄貴そんな言い方したから月深が怯えちゃってるよ。おいで月深」
今度は木星が月深の肩を抱いた。
こうして並ぶと美形家族と思えるがふと太陽を見てそうじゃないと優翔は思った。
「月深はしばらく太陽兄貴の家で生活させる」
そんなことをしたら優翔と会えなくなる。
咄嗟に月深はそう思って太陽の顔を振り向くと、太陽はウンウンと満足げに頷いていた。
「今日の帰りから俺は月深を連れて帰る」
「えっ、それはちょっと待って・・・」
「ん?何か都合が悪いことでもあるか?」
今日の太陽はいつもよりも少しだけ月深に厳しい気がする。
そしてその視線は優翔を捕らえた。
「この頃ドブネズミが一匹月深の周りをうろついていて気になっていた。ちょうど良い頃合いだと君も思わないか?」
その問いかけに優翔は何も答えられず、ただ月深を見つめた。
月深は兄に逆らうことも出来ずにとりあえずおとなしくしていた。
「かわいそうな月深」
木星はそんな月深に堂々とキスをする。
それを見た太陽はなぜか自分のことのように真っ赤になった。
月深は慣れているのか別に何とも思わないらしい。
店の人達も驚いていた。
変な家族だ。優翔はただ呆然と見つめていたが、これで当分月深が来なくなったことに内心ホッとしていた。
これで遠慮なく借金の返済に励める。
<「更待月」月の光20へ続く>
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