東間の本心がよくわからない。
欲深くて優翔の客が欲しいのかと思えば、そうでもないらしい。
そうでなければ個人的に月深に興味を持っているとしか思えない。
やけに月深に絡んできたり、会話をしたがる。
優翔は月深を送る車の中で横で酔って眠っている月深の顔を見た。
確かにノーマルな男でも月深なら一度くらい抱いても良いと思える程、
顔はきれいだし、体も少しだけ小柄かもしれない。
だが、そんなに小さくて小柄って訳でもないが、放っておけない危なっかしさはある。
優翔は自分のことは棚に上げて月深のことを考えていた。
そこに突然優翔の携帯電話が鳴った。
月深が目を開けた。
「誰?」
もたれかかったまま優翔の顔を下から見つめていた。
優翔は携帯をポケットから取り出すと表示画面を見た。
「東間?」
受話器を当てて話し出す。
たった今店から出たばかりなのに一体何の用だと少しだけ不機嫌に電話に出る。
「あ、すみませんこれからお楽しみのところ」
まるで嫌みにのように笑い混じりの声が余計に優翔を苛立たせた。
「で、何?」
「あの実は月深さんのお兄さんがこちらに見えてるんですけど、ちょっと困ったことにかなりお怒りで・・・」
「お兄さん?」
「兄貴!!」
優翔の返事に月深が体を起こして怒鳴った。
「すぐに引き返して!」
月深は運転手の篠崎にそう言った。
篠崎はUターンすると急にスピードを上げる。
そんな緊急事態なのかと優翔は少し考えたが、軽井沢で会ったときもヘリで駆けつけてきた。きっと月深を目に入れても痛くないほど可愛がっている。
でもどうして店に?
優翔には心当たりがなかった。
不思議そうな顔で月深の横顔を見ていると月深が優翔に向き直った。
「実はあの・・・」
赤くなって言いにくそうに月深が優翔を見た。
「兄貴の金ね、俺は優翔の店にかなりつぎ込んでいて・・・それが猿島組の持ち物だってバレたのかもしれない」
そりゃあかなりまずいだろ
優翔は顔から血の気が引いてく気がする。
だって見た目があの恐そうな太陽だ。怒鳴り込んできたら他の客は皆帰るだろう。
「それはまずいな・・・」
「でしょ、兄貴をなだめられるのは俺か木星(きほし)兄貴くらいしかいねぇ」
もうひとり兄さんがいたのか?
優翔はこんな時なのにまた月深の顔を見る。
「ああ、木星兄貴は2番目の兄貴でプログラマーだから気質なんだけど、頭が良いんだ」
ちょっと想像できないが月深と似ていればそんな職業も向いている気がする。
優翔は頷いた。
<「更待月」月の光19へ続く>
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