終身刑という言葉が頭の中でぐるぐると繰り返されていた。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
そのまま聞くチャンスを逃して店に出た優翔は気になっていた。
「新人の優翔です」
源氏名は使わずそのまま店に出た。
優翔は今更知られて困ることもない。
唯一困るというか知られたくないのは月深だった。
逃げ出すように月深のいた別荘を出てきたから顔を合わせずらい。
別にそんなことをとやかく言う男ではなかったが、優翔自身の気持ちが揺るぎそうなのが一番恐かった。
月深はやくざのくせに優しい。
どっちかと言えば自分の方がそっちに向いているかもしれない。
どっぷりと水商売に浸っていて、明るい日の光の下で働くなんてことはとてもできそうになかった。
だからこうして嵐の元になんか来た。
「優翔5番テーブル」
カウンターに座っていると支配人すら呼ばれた。
まだ指名はつかないが、新人ということで先輩のサポートに入る。
以前優翔がいたクラブでも同じように新人の女の子が売れっ子のホステスのテーブルに着いて、あれこれ客の世話を焼いていた。
だが、客の目にとまればそこからどんどんのし上がるのも早かった。
優翔はそんな女性達をさんざん見てきた。
そして自分もその立場になってみると、これはこれでなかなか興味深い仕事だと思った。
「名前は?」
客の女性が優翔が差し出したグラスを受け取りながら声をかけてきた。
先輩の目つきが一瞬鋭く優翔に突き刺さる。
「優翔です。未熟者ですが宜しくお願いいたします」
跪いてそう言うと客の高級な服や貴金属を身につけた女性は微笑んだ。
「新人にしては気が利くのね」
どうやらこの客は優翔が気に入ったらしい。
女性客でも男性同様気の利く男に惹かれるらしい
顔を上げた優翔に先輩のホストの青葉が合図した。
青葉と一度控え室に戻ってくるといきなり膝を蹴飛ばされて転ばされた。
「てめぇ、ここでの流儀っていうもんを知らないみたいだから教えてやるよ」
と口元を上げて笑った。
優翔の手首を掴むともう片方でその指を握った。
「指の一本ぐらい折れても問題ねぇし」
優翔が青葉の瞳を睨みつけた。
<「更待月」月の光5へ続く>
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