「おはようございます」
若く元気の良い青年が次々店長の和真に挨拶をする。
同時に一緒にいた優翔に不審そうな視線を向けた。
やがて控え室に入っていくと和真は皆に優翔のことを
「今度入った新人だからよろしく」とだけ紹介した。
和真が出て行くと急に優翔にひとりの男が声をかけてきた。
「俺は光、よろしく。ここでわからないことがあれば何でも聞いて。あんたも借金作って売られたの?」
彼は優翔よりも少しだけ若く見える。
まだ大学生か卒業したてくらいだろうか。
身長は高く割とがっちりしているが甘いマスクは女性に好まれそうだ。
「よろしくお願いします」
優翔は深々と頭を下げる。
「へぇ、若いのに礼儀正しいんだ。前にも水商売してた?」
と今度はもう少し年上の青年が声をかけてきた。
一見真面目そうだがビシッと決め込んだブランドもののスーツがいかにもホストっぽい。
「ええ、まぁ」
「俺は東間(あずま)ここはクセの強い連中が多いから注意した方がいいぜ」
親切に教えてくれる彼も悪い人間ではなさそうだった。
「待田優翔ですよろしくお願いします」
優翔が深々と頭を下げると東間はそれを遮った。
「おっと、本名なら名乗る必要はねぇぜ。ここはそう言う場所だから。実際に昼間は学生やサラリーマンをしながら夜だけここで働いている奴だって多いし」
「はぁ」
そう言われて優翔は周りの男達を見回した。
確かにあまり他の人間とは関わり合いたくないという感じの男も多い。
やはり借金を返済するために割の良いバイトをするしかないのかもしれない。
「で、あんたはどのくらい?」
いきなり光にそう言われて優翔は首を傾げた。
「どのくらい?」
「優翔のここにいなくちゃいけない時間だよ」
光はニコニコと微笑んだ。
「そんなのないけど・・・」
すると2人は真面目な顔になって顔を見合わせた。
「終身刑か」
<「更待月」月の光4へ続く>
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