大学時代にはじめた高級クラブのアルバイト
時代の影響もあって景気が良かった
おかげでそのまま支配人にならないかという
甘い誘惑に大学生だった俺は2つ返事で請け負った。
それがどんな仕事なのかも良く理解もしない上で
簡単に請けてしまった。
しばらくは華やかな生活を送っていた。
だが、世の中そんなに甘いもんじゃなかった。
それからいきなり不況の波が押し寄せた。
人生経験も、こういった店の経営も全く知らず
大学で勉強していた(といっても殆ど勉強なんかしなかった)経済学も全く通用しない。
頼ろうにも友人達は景気の良いときには集まってきたクセに
傾きかけた船には見向きもしなかった。
雇われ支配人だった俺にオーナーが言った言葉は
「別にこのままやめてもいいよ。けどこの借金億単位だから普通の給料じゃ無理だね」
オーナーは金貸しからその金を借りてその返済を全て
オーナーだった俺に支払えと言ってきた。
世の中のことを何も知らない俺はにげだす事も出来ないまま
連れてこられたのがこの店だった。
ホストクラブ・・・・とは名ばかりの男の売春を斡旋する店
相手は女ならまだいいが、実際客の7割が男性というのが現実だった。
まさか自分がここまで身を落とすなんて考えたことはなかった。
ちょとつまづいたくらいでこのザマか・・・
この店は猿島組が経営しているらしくもしも途中で逃げだそうとかした奴らは酷い目に会わされるらしい。
オーナーが借りた金貸しはこの猿島組の経営しているひとつらしい。
俺ははじめて店に出るために控え室に行った。
そこにはそれなりに見栄えのする若い男ばかりが集まっていた。
「へぇ、新入り?」
同じ年くらいのスラリとモデルみたいな男が声をかけてきた。
「今日からです。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると別の男が俺の頬を掴んだ。
「なかなかいいね。それで君もあの吉田ってオーナーにはめられたの?」
え?!何を言っているのだろう?
俺はきれいに整った男の顔をじっと見つめた。
「知らなかったの、全部最初から筋書きが出来てたんだよ。可愛そうに」
頭の中が真っ白になっていった。
<「更待月」アルベド1へ続く>
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