門から少し離れた道路沿いにあったコンビニの駐車場で羽根は兄の翼を待っていた。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
ここに来てから10分ほどして翼の車が来た。
羽根に指示された場所まで速攻で来たらしい。もしかしたら仕事中だったのかもしれない。
車の中には翼の仕事用カバンが置いてある。
「羽根・・・心配したぞ」
本当に心配そうに翼は座り込んでいた羽根を抱きしめた。
「ごめん。でも大丈夫だから」
羽根も安心させたくてそう言うと車に乗り込んだ。
「腹は?減ってないか?」
「ううん、今食べてきたから大丈夫だよ」
車に乗り込みながら翼は羽根の頬に手を触れると羽根は微笑んだ。
「そうか、本当に?」「うん」
その言葉を聞いて翼は車を動かした。行き先を言わずに走り出した翼に羽根は
「会社に行きたいんだけど・・・」と言いにくそうに呟く。
「会社だと?!」翼の眉間に僅かにシワが寄る。
やっぱりこの状況で会社はまずかったか・・・
羽根はそれでも懸命に翼の顔を見つめていた。翼はチラッと羽根の顔を見てからきちんと着こなされているスーツに目を落とした。
「それお前のじゃないな」
ポツリと指摘されて羽根は困ったように曖昧に頷いた。
「ああ・・まぁ、ちょっと借りました」
「ほう、随分きちんとしてお前のサイズにぴったりなんてできすぎてないか?」
そう言われて羽根ははじめて気がついた。確かに朱鳥の性格からきちんと畳まれていたYシャツもきれいにつるされたスーツもそういうもんだと思っていたけど、体格が似ているだけでこうもぴったりと自分に合ったサイズもめずらしい。
もしかしたら羽根のために朱鳥は予め用意していてくれたのか?
出て行くときだってちゃんと車を回していてくれた。最もそんなものに乗れば自分が雫の屋敷から逃げ出した気はしないから断ったのだが・・・
「たまたまだよ」
羽根自身もきっとそうだと思いながらも翼にはそう言って笑った。
「とりあえずお願い会社行かないと俺クビになっちゃう」
「まぁ、金には困らねぇけどクビは可愛そうだな。お前が好きで入った仕事だしな」
翼はようやく納得して車を会社に向かって走り出してくれた。
羽根が職場のあるビルの前に着いたのは始業時間の10分前だった。
「間に合った」
「後輩のクセにさんざん無断欠勤したあげく、先輩よりも遅く出勤してきて間に合ったもないもんだ」
後ろから聞き慣れた声がする。
「山田さん」羽根は自分の上司のの顔を見上げた。
「これはいつもうちの弟がお世話になっています。この度は私が弟を休ませてしまって申し訳ありませんでした。体調が優れなかったもので、でももう大丈夫です。お手柔らかにお願いします」
早速羽根を見つけて口元を上げた山田に翼は羽根を庇うように山田の前に立った。
「お兄さん?」
「はい、私は羽根の兄で美津濃翼と申します」
「羽根君の上司の山田一郎です」
お互いに右手を出すと握手をした。だがお互いの視線はまるで宣戦布告でもしているかのように険悪だ。羽根は2人を苦笑いしながら見つめていた。
<「恋占い」職場にて4へ続く>
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