アールグレイの良い香りと同時にポコポコとカップに注がれる音がした。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
少し頭を傾けると朱鳥がいつもの黒い服を着て何もなかったかのようにお茶を入れていた。
全て夢だったのだろうか?
羽根はそれさえも区別できない。まぁ今となってはそんなことはどうでも良いと思った。
雫がこんな風に側にいてくれればそれだけで幸せだと思った。
今日のあなたは疲れた体を癒すのを優先してください。あなたに魔の手が伸びようとしていますが、今は安全です。でもその場所から一歩でも外に出たなら、あなたの体を保証するものはありません。十分注意が必要ですので気をつけましょう。
やけにリアルな占いに目眩がした。
雫は画面を見て落ち込む羽根の携帯を取り上げてそれを目で追ってからポイッとテーブルの上に投げた。
「当然だ。お前はここから一歩も出るな」
強引だけど嬉しかった。
そのまま啄むような優しいキスを落としながら
「今日も出かけてくるけど、おとなしく待っていないともう俺は君がどうなっても知らないからね」
そんなことを言われても自分もサラリーマンでたまたま仕事での依頼で雫の会社へ出向してはいるものの、いつまでも自分の会社に顔を出さないわけにもいかない。
「けど、仕事しないと」
羽根は雫に伝えてみた。
「聞こえなかった?一歩も出るなって・・・君は監禁されてるんだよ」
羽根の前髪を何度もかき上げながらドキッとするような魅力的な瞳で羽根を見つめる。
「まぁ、俺が出かけるまでは少しだけ時間があるんだけど。せっかく羽根の弱った体をいたわってやろうとしているのに、まだ足りないって言ってるのも同然だね」
ポットを持って立っていた朱鳥がもう一度雫のカップに紅茶を注ぐ。
その視線はあくまでカップしか見つめていない。
だが雫は朱鳥の腕をグイッと掴んだ。
「ほらまた、こいつスカした顔しいるじゃねぇか。羽根、お前がこいつを泣かすところが見てみたい」
朱鳥の瞳が少しだけ雫を睨んだ。雫は朱鳥の顎を掴んだ。
「ふーん、今日は随分と挑発的じゃねぇか。羽根に惚れたのか?そんなの絶対に許さないけどね」
「やめてください。俺はどこへも行きません。朱鳥とも何もしませんから安心して雫は仕事に行ってきて」
羽根が朱鳥を庇うように両腕を雫の首に回すと雫は「ふん」と言って朱鳥から手を離した。
解放された朱鳥は置いてあったティーポットを持つと一礼して部屋を出て行った。
「どうして雫は朱鳥に酷いことばかりするの?」
雫の端正な顔の間近に顔を近づけて羽根は大きな瞳を揺らした。
「本当は彼のことがすごく好きなんじゃないですか?」
その言葉に雫は口元を上げた。
<「恋占い」テラスにて3へ続く>
にほんブログ村
読了、お疲れさまでした。
web拍手をありがとうございます。
PR