雅秀は昼になっても芳生の部屋から出てこない。光長は遣いの桔梗に導かれて芳生の部屋へと向かっていた。あいかわらず迷路のような回廊だが、長くここで暮らせば覚えてくる。
それでもまだひとりで歩く自身はない光長は桔梗の後ろ姿を見失わないようについて歩いた。
後ろから見る桔梗の表情は無表情のままだった。
ようやく芳生の部屋の前まで来ると桔梗はそのままどこかへ行ってしまった。
いつもなら真っ先に声をかけて入っていくところなのに何となく不自然な気がしてならない。
光長がドアをノックすると中から芳生の声が帰ってきた。光長はドアを開けた。
手前に置いてある衝立のせいですぐに中の様子は見えない。だが、そこから僅かにはみ出したソファーの上に衣服が無造作に掛けられているのがわかった。
よく見ると見覚えのある黒地に茶のペンシルストライブのジャケット・・・雅秀の着ていた服らしい。光長は衝立の横に立って目の前の光景に息を飲んだ。
「・・っ!・・」
光長は声にならない悲鳴をあげて立ちすくんだ。
上半身は確かに人だった。多分雅秀と芳生、それから月余の3人だった。
だが、芳生と月余は腰から下が蛇のように先が窄まっていて足がない。
長い尾のようになり鱗なのかぬらぬらと光りながらうねって絡みあう。
まるで2体の蛇が雅秀に絡み合っているかのような浅ましい光景が目の前に広がっている。
そのうち雅秀の顔が光長を見つけて目を見開いてから悲しそうな表情を浮かべた。月余は長い髪を乱しながらキラリと瞳の奥を輝かせて微笑んだ。芳生は眼鏡の奥の瞳は何を考えているのかわからないほど無表情だった。
そのうちの一体の尾のようなものが光長の足に巻き付いた。ハッとして逃れようとするが、もう一本今度は腕に絡みついて、ズルズルと3人の元へ連れて行かれた。
その中で雅秀だけは光長を守ろうと他の2人の体を必死で離そうとしていたが、雅秀の体に芳生が巻き付いていて動きがとれない。瞳だけで光長を追って懸命に手を伸ばす。
ようやく届いた光長の手首を引き寄せてその背中を抱き寄せたが、既に巻き付いている月余の尾が光長の足の付け根にスルリと忍び込んできた。
「あっ・・やっ・・」光長は頬を染めていきなり入り込んできた滑ったものを拒絶するように足を閉じる。だがもう一本腕に巻き付いていた尾がもう一方の足首に巻き付いて思い切り開かせた。勢いで着物の前がはだけて白い足がむき出しになると、先に入り込んでいた月余の尾はむき出しの尻の間へと入り込んでいく。
「うっ・・やぁ・・」何が起きているのかもう把握できない。目の前で体を支えている雅秀さえ赤い顔をしながら辛そうな顔をしているだけだった。うねうねと蛇の様なものが波をうちながら動いている。雅秀は既に服はなく全身が赤く擦れている。起ち上がっている雄が反り返って腹についているのを見るとこの2体に嬲られていたらしい。
それでも雅秀は必死に光長をかばおうとしていた。
「どうせあなたも同類なのだから、もう観念して彼を仲間に引き入れてしまえばいいじゃないですか」芳生が無表情のまま口を開いた。
「うーん少し惜しいけど永遠に彼を嬲れるならそれも悪くはないね」月余は軽く微笑んだ。
光長は雅秀がどうして自分に不老不死になることをやめさせたかったのか今やっとわかった。
こんな化け物に自分をしたくはなかったからだった。
<「弦月」社長室にて2へ続く>
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読了、お疲れさまでした。
web拍手をありがとうございます。
既にリーマンものからかけ離れました。。。スミマセン。。。
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