そうかもしれない
自分が生まれてこなければ、父も母も妹も今でも元気で楽しく生活していたに違いない。
汚れた血・・・
自分がどこの生まれで誰の子なのかなんて知らないし、それでいいと思っていたけど
アサドはそれを知っているのだろうか?
自分が憎くてあんな酷いことばかりするのか
それにしてもこの薬は少し厄介だ。何もなければ普通でいられるけど
少しでも体に火が付けば、一気に体が追い詰められる。
ナジムは意識がなくなるまでのアサドの行為を思い出した。
また今日もアサドにあんな風に触れられるのだろうか・・・
そう考えるとナジムは体が熱くなっていく。
「どうして・・・」
あんな薬まで使っていたぶられているというのに、アサドに何かを期待しているなんて
やっぱり自分は淫乱なのかもしれない。
どこかにそんな汚らしい血が流れているのかもしれない。
ナジムはベッドから離れると部屋の中にあるバスルームへ行く。
この城は広いけれど、ナジムはこの部屋から出ることはなかった。
ナジムが今いるマラークの部屋は、隣がアサドの部屋になっていて、身の回りの世話は全てアサドが行っている。
部屋の入口には警備と称する見張りがふたりも立っている。
バスルームもトイレも全て部屋の中にある。
この部屋だってベッドの置かれている寝室部分と、身近な客を迎えるダイニングと、衣裳など着替えを行う部分などいくつかのスペースに区切られていて、1軒分の家ぐらいはあった。
その面積からいえばかなり大きな家ぐらいあった。
バスルームの広さだってそれなりだった。
昨日から殆ど何も身につけずに今もバスルームにガウンだけ羽織って来た。
ナジムは熱いシャワーで体を洗い流すとまたガウンを羽織って部屋に戻った。
部屋にはアサドがいた。
またこんな格好で歩き回っていることを指摘されることを恐れながら、ナジムはガウンの前をかき合わせた。
「どうやら」
アサドの声にビクンと大きく背中を揺らすと、アサドはナジムのガウンを掴んだ。
「一度言ったことは頭に入っているようですね。今は私とふたりきりだから無理に服を着る必要もないですけど、今日はこれからマラーク様になりきって公務に参加していただきますので」
とナジムの着ていたガウンを取る。
「はっ!」
突然ガウンを取られてナジムは羞恥で赤くなる。
「まだそんな羞恥心が残っていることはいいですね・・・初々しい反応はマラーク様を演じる上では必須です。まぁ、まだどこにも触れてもいないのにここを尖らせてしまうのは感心できませんが」
とアサドの人差し指がナジムの胸の粒を擦るとナジムはその肩をまた揺らした。
アサドは数回胸の上を撫でてから指を離すと、着替えを肩からかけた。
しっかり襟元までぴったりとした服を着せられても僅かに刺激を植え付けられたナジムの体は薬の効果がジワジワと出始めていた。
これでもう少し刺激を与えられれば間違いなくまた淫らな行為に走ってしまう。
それでもそんな素振りを見せればアサドはきっと喜ぶに違いない。
ナジムは何気ない素振りで朝食の席に着いた。
「これから軍事基地で行われる記念式典に参加していただきます。ここにはあなたのお兄様や軍の司令官などあなたをよく知る方が多くいらっしゃいます。私もなるべくあなたとは離れないよう気をつけますが、もしお一人になられても余計なことはおっしゃなくて結構です。マラーク様はあまりどなたとも好んで口をきかれない方でしたからあなたが不機嫌な態度をとられても特に気にはとめられないはずです」
食事をとりながらアサドはナジムに今日の公務について説明した。
ナジムはここから出られることが、少し嬉しかった。
アサドはそんなナジムを睨んでいた。
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