アサドは一度部屋を出て行った。
外出の準備をするためらしい。
やがて戻ってくると、その後ろからカマールが入ってきた。
ああ、直接彼がナジムの警備にあたるらしい。
これはまた・・・
そう思ってナジムはアサドの顔を見る。
いつもの無表情に戻っている。
バスルームで見せたような意地の悪い笑みなど微塵も感じられないほど、完璧な聖人面だ。
ナジムはそんなアサドが一番恐ろしいもののように感じてきた。
きっとまたカマールがちょっかいを出せば、後から誰もいないところでナジムを虐めるに違いない。
アサドもそれを承知の上でわざとやっているのかもしれない。
少しでもアサドに傾いていた自分の感情がバカみたいだ。
やっぱりこの男はそういう奴だ。
ちょっと優しかったのだって、ナジムにマラークの面影を見ていたに違いない。
くやしい・・・何とかこのアサドの裏をかいてやりたい。
ふとそんなことを考えて後ろのカマールを盗み見ると、カマールの鋭い視線と目があった。
流石に軍事指揮官だけのことはあるらしい。
だが、すぐに首をかしげた。
あまり頭が良いとは思えないのが難点だ。
「早くお車にお乗りください」
アサドが車のドアを開けて傅いた。
ナジムは車に乗り込むと、隣の席にはアサドが乗り込んだ。
カマールは助手席に乗った。
車が走り出して間もなくアサドの手がナジムの膝に触れた。
「早速色目をお使いになられるとは・・・困った方です。一度抜いたくらいでは足りなかったですか」
わざとらしく耳元で囁かれてナジムの色白の頬が真っ赤に染まった。
「そんな?!」
「私が気づかなかったとでもお思いですか?随分と舐められたものですね」
アサドの手が後ろからナジムの腰の辺りを撫でた。
「やっ!」
少し大きな声が出たところでアサドは人差し指を立てて「しーっ!」と視線を前の席に向けた。
高級車で運転席まで間が開いているとはいえ、同じ車の中に乗っているカマールに気づかれてしまう。
ナジムは声を飲み込んだまま体をくねらせてアサドの手から逃れようとした。
だがアサドはがっちりとナジムの腕を掴んでいた。
「おとなしくなさっていれば、到着するまでにあなたを天国にでもいかせて差し上げます」
耳元で囁く言葉にゾクゾクと背中から甘い予感がせり上がってくる。
服の中にアサドの手が入り込む。
「・・・っ・・・」
突然尻の割れ目をアサドの指が触れてナジムはアサドの胸に顔を伏せた。
「どうかなさいましたか?」
バックミラーを見ながらカマールがナジムの様子がおかしいことに気がついた。
「ちょっと酔われたみたいですが、こうされていればすぐに治ります」
すかさずアサドがそう言うと、一瞬沈黙はあったもののカマールは一礼して視線を戻した。
なぜかナジムは少しホッとした。
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