「はじめまして、私はスティーヴンと申します」
マラークの手を取るとその手の甲にキスをする。
まだ若く美しいと表現すべきか、とてもやり手の実業家とは思えないほど柔らかい物腰の紳士だった。
マラークはニッコリ笑った。
「お前が私の主か?」
すると彼は頷いた。
「本当の天使が目の前に舞い降りたかと思うほど眩しい。本当に今日から家に来てくれるのか?」
マラークは困ったように後ろの商人を振り向いた。
「はい、旦那。これは滅多に手に入れられるようなもんじゃねぇぜ。天使と言えば確かに天使だ。良い買い物したね」
商人は大きな腹を突き出してガハハハハっと大きな声を上げて笑った。
スティーヴンという男は商人からマラークを預けられるとその肩に腕を回した。
「すぐそこに車を用意させてある。長旅で疲れただろうからすぐ屋敷に帰ろう」
マラークはスティーヴンの車に乗せられた。
隣に座ったスティーブンは何も言わずにマラークの手に自らの手を乗せていた。
これまで簡単に人に触れられたことがないマラークはその手をすぐにでも払いたかった。
だが一応そのままおとなしくすることにした。
まだこの男のことを何一つ知らないのだから、急に何かを仕掛けることは自らを危険にさらすということを知っていた。
彼の手はとても冷たかった。
ちょっとゾクッとするほど冷たかった。
それが何を意味しているのかマラークにはまだわからなかった。
「ご主人様、着きました」
運転手が声をかけて車を降りると後部シートのドアを開けてくれた。
スティーヴンが降りるとマラークにまた手を差し出した。
しかしマラークはその手は取らずに彼の前を通り過ぎた。
運転手は驚いて目を丸くした。
だが、スティーヴンはクスッと笑った。
「ではこちらへ」
とドアを開く。
マラークは開かれたドアの中へと足を踏み入れた。
今日からここが私の居場所か・・・
はじめて見た英国式の建築物や彫刻品
優雅でセンスの良い家具類
マラークの瞳が輝いた。
「それでは旦那様失礼いたします」
執事がマラークの部屋まで案内を済ませると出ていった。
「で、私はお前に何をすればいい?」
「そうだな、まずそこで今着ている服を全て脱げ」
スティーヴンは笑顔のままマラークを見た。
だがその瞳は笑っていなかった。
マラークは服を脱ぎはじめた。
やはり私も性奴とやらになるのか・・・
下着を残してマラークが裸になるとスティーブンはその下着も引っ張った。
「全部脱げと言ったはずだ」
スティーヴンは二人になると出会ったときとは全く印象が変わった。
マラークは言われたとおり下着も脱ぐと生まれたままの姿でスティーヴンを見た。
するとスティーヴンはマラークの背中の辺りに触れた。
「羽根がない・・・こっちは」
「あっ!なにを!!」
いきなり足の間を掴まれてマラークは慌てた。
「ある。天使は両性類じゃないのか?まぁ、この方がセックスには都合は良いが」
マラークは体をよじってその手を払おうと手を伸ばす。
「逆らうな」
スティーヴンの言葉にマラークのは一瞬ひるんだが、すぐに挑発的な瞳で睨みつけた。
「いいよ。私を楽しませろ」
「これはこれは王子様は余裕でございますね」
「ひっ・・・」
急にスティーヴンがマラークの性器を強く握り込んで思わず声を上げた。
くそっ、負けるもんか!マラークは歯を食いしばった。