さて、どうやったらお湯が出るのだろう?
マラークはとりあえずボタンを押してみた。
するとバスタブのお湯が出てきた。
「おお、これでお湯が出るのか・・・シャワーはどこだ?」
次に別のボタンを押すと今度は風呂の中がジャグジーになった。
もうわからないからとりあえずこのお湯で洗って出ればいい。
と思っても今度はボディソープがわからない。
シャンプーはどこだ?
キョロキョロしてようやくそれらしいボトルを見付けて体を洗った。
マラークはシャワーを諦めてお湯の中に入って体を洗い流した。
それでもベトベトだったところがすっきりとして、出たところに置いてあったバスローブに体を包んだ。
バスルームから部屋に戻るとスティーヴンが待っていた。
「こっちへおいで」
両手を開いて待つ男の腕の中へ無言で戻っていった。
「ん?」
スティーヴンが顔をしかめた。
マラークは不思議そうにスティーヴンの顔を振り向きながら見上げた。
「ちゅんとシャワー出さなかったの?体が冷たい」
スティーブンの両手はマラークの肩から腕を擦っていた。
「風邪などひくな。もう一度来い」
スティーヴンはマラークを抱きかかえたままバスルームへ向かった。
「大丈夫だけど・・・」
「けど?」
マラークの言葉にスティーヴンが続けた。
「シャワーの出し方がわからなくて」
マラークはちょっと怒ったように口を尖らせた。
それを見てスティーヴンは噴き出した。
「王子様だねぇ。やっぱり俺が洗えば良かったな」
と今度はしっかりバスルームにまで入り込んできた。
「大丈夫だから!!」
「うるさい。黙れ」
スティーヴンはコックをひねってお湯を出すと自分の手にかけて温度を確かめてから
マラークのバスローブを脱がせてお湯をかけた。
確かに温かい。
マラークはとても気持ち良くなり、目を閉じた。
椅子に座ったまま心地よくて眠ってしまった。
気がつくと唇に何か柔らかいものが触れた。
それからすぐにスティーヴンの舌が口の中に入ってきた。
キスされていたらしい。おかげですっかり目が覚めた。
そのままシャワーは背中の肩胛骨あたりにかけられている。
「羽なんでない?」
そういえばスティーヴンは最初からそんなことを言っていた。
「悪いことをしたから引きちぎられた」
マラークがニッコリと微笑むとスティーヴンはその顎を盛んでもう一度唇を塞いできた。
噛みつくような濃厚なキス・・・
解放されると体がぐったりとしていた。
スティーヴンはバスタオルでマラークをくるむとそのまま抱き上げてバスルームを出た。
そのままベッドに運ばれ投げ出された。
「少し眠ればいい」
スティーヴンは立ち上がった。
読了、お疲れ様でした。
web拍手をありがとうございます。