蒼の住んでいるマンションはこのカラオケルームから車で20分ほど走ったすぐ近くだった。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
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朱鳥が羽根を車から運んで蒼の部屋に運んだ。
「ここに寝せて置いてちょうだい。あとはさっさと帰りなさい」
背中を蒼に押されて朱鳥は長い髪を揺らして振り向いた。
「あなたまで羽根に何かする気じゃ」
「馬鹿ね。私はこの子の上司なのよ・・・きっちり教育はしておかないといけないわね」
そう言う蒼の笑顔が怖くて、朱鳥はとんでもない奴に羽根を預けてしまったと思った。
「それに最初に人のものに手を出して置いて、後始末までやらせた上にそんなことよく言えるわね。あなたも相変わらずつめが甘いのね」
蒼は片手で朱鳥をヒラヒラと追い払った。
「それは蒼が・・」
「はいはい、雫には内緒にしておくから安心なさい」
いいのか悪いのかわからないまま朱鳥は蒼のマンションを後にした。
「さて、それにしても可愛い子ね。食べちゃいたいってこういう子のこと言うのかしら。雫が欲しがっていたのもよくわかるわ。ちょっとだけ意地悪したくなるわね」
蒼は羽根を横たえたセミダブルの大きなベッドの横に腰を下ろした。
ゆっくりと顔を近づけて静かな寝息を立てている顔を覗き込む。
色白のきめ細やかな素肌に赤い唇。影を落とすほど長くてきれいなまつげ。サラサラとした素直そうな髪を何度も撫でながら目元や頬に唇を押しつけた。
「無防備に寝てる羽根が悪いのよ」そう言うとあくびをしながら自分の着ていた服を全て脱ぎ去った。蒼は普段から素っ裸で寝ている。
全てを脱ぎ去ると羽根の横に潜り込んだ。
「やっぱり可愛い子」蒼は何度も羽根の顔中に口づけながらその体を両腕で包み込んだ。
そしてそのまま眠りについた。
母親に抱かれて眠っている。
それはとても柔らかくて心地いいし良い匂いがした。
「お母さん」
羽根がそう言うが母の顔が良く思い出せない。
そもそも父親と兄の男の中で育てられた羽根には母の記憶がなかった。
あれ?お母さんってどんな人だったかな?でもすごく温かくて気持ちいい。
「ずっとこのまま一緒にいられるの?」
羽根の問いかけに母は首を横に振るばかり。声さえ聞こえない。
どんな声だったかな?俺のお母さん・・・どこにいたのかな?
聞きたいことが山のようにあるのに何も言ってくれないの?悲しい・・・
「お前は甘ったれだ!!」「母などいない」父も兄も羽根にはそう言って母のことを教えてはくれなかった。
「羽根には兄さんがいるから大丈夫だよ」
兄はすごく優しかった。いつでも羽根の面倒を見てくれた。
父は羽根を見るとなぜか悲しそうだった。そしていつも避けていた。
「兄さん、お母さんがいるよ」そう言うと兄は怖い顔になる。
「お前には母など最初からいないんだ」
「いやだ!!!」
「羽根!!どうしたの?」
隣にいる女性に声をかけられて羽根はまどろんでいた。
<「恋占い」蒼の部屋にて2へ続く>
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