羽根は知らなかったことだが、翼は羽根が帰ってこない理由を朱鳥から連絡を受けて知っていた。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
翼はもちろん大好きな弟のことが心配だし、本当は羽根と一緒にいたかった。
だが、せっかくの日本滞在時にひとりでいるのも寂しいので、その間蒼空を呼んで一緒に暮らしていた。羽根がそれを知ったとしてもきっと喜んでもらえるだろうと自分に言い解釈をしながら羽根のベッドで一緒に生活していた。
この日も2人とも遅い出勤のため2人でベッドに潜り込んでいた。
もう目は覚めているが、2人は裸のまま抱き合って穏やかな午後を満喫していた。
「腹減ったな」翼の言葉に蒼空は
「俺でも食ってればいいじゃん」と言う。
「お前じゃ腹はいっぱいにならないで余計に渇く・・けどここから出るのは嫌だ」
と腕を伸ばしてしなやかな肢体を抱き込んだ。
女性のようにスラッと細い手足をベッドの上に投げ出して蒼空は笑う。
そんな何でもない幸せはそう長くは続かないことに気づきながらも翼に真実を聞けない蒼空だった。
抱き込まれた翼の胸に頬を付けて子供のように甘えると、翼はその頭を撫でた。
「羽根君どうしてるかな」
ぽつりと蒼空が呟くと翼は蒼空の頭を撫でていた手を止めた。
急にベッドから降りて立ち上がると「シャワー浴びてくる」と部屋を出て行った。
居場所がわかっているからこそ気がかりだし、思い出すと腹立たしい。
誰よりも羽根のことを愛している自信があったのに・・・
羽根はノーマルだったはずなのに・・・それを変えてしまった男が一緒にいることが面白くない。
自分だって蒼空と好き勝手なことをしているくせにと思っていても、やはり過保護な兄は直りそうにない。
そんな頭を冷やすために翼はシャワーを浴びにバスルームへ行った。
一方蒼空は近くにあったTシャツに短パンを着てヘッドホンステレオを耳に好きな音楽でも聴こうとボリュームを上げた。
そこに羽根が自分の部屋のドアホンを鳴らした。
当然中の2人には聞こえるはずもなく、羽根は兄の翼が不在だと思いこんで自分の持っていた部屋のキーを取り出した。
鍵穴に差し込んで鍵を開けるとドアを開けて中に入った。
「ん?兄さんいるの?」
玄関に置かれている靴と物音から部屋の中に人がいる気配を感じた。
羽根はそのまま奥へと入っていって自分のベッドの上にうつ伏せになってヘッドホンステレオを聴いていた蒼空に気づいた。
「蒼空さん?」
だが翼にはその声は聞こえていない。
彼は音楽に合わせながらフンフンと首を振っていた。
「蒼空さん!!」
羽根は蒼空の片耳からイヤホンを取ってもう一度名前を呼んでみた。
「わぁっ!」
蒼空はびくっと跳ね起きて羽根の顔をじっと見つめた。
それからようやくステレオを外して笑った。
「ああ、びっくりした。ちゃんとドアホンを鳴らしてよ」
「鳴らしたよ・・・っていうかここ俺んちなんですけど」
とほっぺたを膨らませた羽根に蒼空は「そうだっけ」と長い舌をペロンと出した。
<「恋占い」翼の部屋にて2へ続く>
にほんブログ村
読了、お疲れさまでした。
web拍手をありがとうございます。
PR