雫は素早く衣類を直して車から降りてどこかへ移動する。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
すぐに戻ってくるとまだぐったりしている羽根を
どこからか持っていたバスタオルで体をくるみ抱きかかえた。
「帰るぞ」
と耳元で囁く雫の声に自分が戻るべき場所がはっきりとわかった。
抱きかかえられている体の部分から雫の体温が伝わってホッとする。
いつからこんな風に女々しくなってしまったのかとも思ったが、雫に出会ってから羽根を取り巻いている全ての環境が変わってしまった。
そうだ兄さん・・・電話したから今夜は待っているかもしれない。
羽根は横にある端正な顔をじっと見つめた。
「兄に会いたいか?」
その気配に気づいたのか雫は羽根の顔を見ずに冷ややかに尋ねる。
羽根は黙ったまま視線を雫から外した。
「お前の兄はまた海外に行くらしい」
「えっ?!」
兄の翼が帰ってからほんの少しだけ一緒にいたけれどそれも束の間で雫の屋敷で監禁されていた。しばらく日本にいる物だと思っていたのに・・・
羽根は急に沈んだ顔になった。
雫は羽根を自分の車の助手席に座らせるとその前に跪いた。
「羽根」
俯く羽根の瞳に優しい顔をした雫映し出された。
「兄さんに会いたいです。お願いです会わせてください」
雫はフッと笑った。
「俺は君に酷いことをしていね。君の自由を束縛している。けどわかって欲しいんだ」
雫は羽根の両手を自らの両手で包み込むように持つと口元に運んだ。
「君を放っておくと君の上司達のように獣が群がってくる。君には自覚がないから余計にたちが悪いんだが・・・俺は君が心配だし他の男に君が泣かされたり辱められていると腹が立つ」
羽根の両手に口づけながら続けた。
「だからずっと羽根を俺の手元に置いておきたいんだ。これは俺のエゴかな?」
羽根は大きくかぶりを振った。
「違う・・・俺が悪い・・・誰の手管でも気持ちよくなると我慢できなくなる。本当はもっと我慢しなくちゃ行けないのに・・・俺、本当は雫がいいんだ。雫意外は嫌なのに・・・けど兄さんはたったひとりの俺の兄さんだから・・・ごめん」
羽根の膝にポタリと雫が落ちた。雫が顔を上げると涙を流した羽根の顔がある。
雫は少しだけ呆然としていたがゆっくりと羽根の頭を抱えて自分の肩に押しあてた。
フワリと雫のコロンの香りが漂う。
「そう言われると嬉しい・・・でも、謝らなくてもいいよ。そんなの知ってるから」
羽根は雫の首に両腕を回す。
「お兄さんのところに送るよ。羽根が気が済むまで一緒にいればいい」
「ありがとう雫。俺・・・雫が一番好き」
と羽根は顔を雫の肩に押しあてた顔を上げた。
「じゃあ俺にキスして」
「・・・うん」
羽根がゆっくりと雫に顔を近づけるとフワリと唇を重ねた。
雫は両腕で雫をギュッと抱きしめながら押しあてられた唇の隙間に舌を入れると羽根の舌と絡め合う。
良かった・・・兄さんに会える。
羽根はそれを雫が理解してくれたことが嬉しかった。
<「恋占い」翼の部屋にて1へ続く>
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