困った顔で考え込んでいる羽根を見て美波はずっと笑っていた。
笑い事ではないと知っていても蒼空と翼をよく知っている美波にはその答えが大体わかっていた。
「冗談だよ。大丈夫僕が何とか出来ると思うよ」
美波はしばらく考え込んでいる羽根にそう言った。
「どうにかって・・・どうするの?」
羽根は少し身をのりだした。
「ん~僕が2人とも愛すればいいんじゃないかな・・・女性には理解できないことかもしれないけど男は2人を同時に愛することができる生き物なんだ。僕は蒼空も好きだから3人で恋人になればいいんじゃないかな」
そんなのありか?
羽根にはよくわからなかった。同じ男でも理解できる人とそうじゃない人がいるらしい。
雫しか心の中に置いておくことしかできない自分は男性ではないのだろうか?ここにいる美波の方が羽根よりも見た目は美しいのに男っぽいということだろうか。
「君は今自分が好きな人のことを考えていたでしょう」
「あ、はい」
突然話題を自分に振られて羽根が少し顔を赤らめた。
「すごく良い顔していたよ。その人のこと・・いや雫さんのこと好きなんだね」
「好きというか・・まあ俺は」
と羽根はチラッと隣にいた朱鳥を見ると彼はまた無表情のまま羽根を見た。
「帰ろうか」
羽根が朱鳥に笑顔を向けるが彼の表情はそれでも変わることはなかった。
「ふうん、彼は君が好きなんだね」
美波は面白そうに朱鳥を見ていた。
それでも朱鳥は表情を崩さないが
「私も2人を愛することができる人間の一人のようです」
と羽根を抱き上げた。
「いいよ歩けるから」「いいえ、いけません」
美波は2人のやりとりを見つめながら一人納得する。
「君たちも良い関係が保てるといいのにね」
美波の優しい春の光のような笑顔を向けられて羽根は今更のようにドキッとした。
朱鳥はそんな羽根を横抱きにして大切そうに運んでいく。
車に乗せられた羽根は美波の家を後にした。
きっと美波は翼と蒼空と話し合って最善の道を見つけるに違いない。
彼らは少なくとも羽根よりも年上なのだ。
<「恋占い」占いの館にて1へ続く>
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