部長室に行くと部長の月岡蒼は自分の席に座って書類のチェックをしていた。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
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「まあ、そのソファーに座って」
と言われて、羽根は彼女のデスクの手前にあるソファーに腰掛けた。
「それで一昨日の会食はどうだった?雫はいい男でしょ」
この部長は雫と呼ぶほどの仲がいいのだろうか?
ましてや何となくよく知ってそうだ。一昨日はまるで他人のような話しぶりだったのに・・・
羽根に何か隠していてそれを装うためにわざと知らないふりをして行かせたのだろうか?
何のために?
「はい、普通では食べられないようなおいしい料理をご馳走になりました」
「そう、で、彼は?」
部長の蒼は羽根にどんなことを聞き出したいのだろうか。レストランの話には満足していたならしくもう一度そう尋ねられた。
「桧山さんのことですか?とても親切にしていただきました」
その答えを聞いて蒼はようやく自分のデスクの椅子から腰を上げた。
羽根の前に歩いて来ると、その顎を捕らえた。
羽根はきれいな年上の上司に顎を掴まれて見上げながらほんのりと赤くなった。
「ふうん、そう・・・それで?」
心の中まで見透かされるような鋭い瞳が羽根を見つめる。
羽根は思わず言ってはいけないようなことを口走りそうになって言葉を飲み込むと彼女の手をやんわりと外した。
「いえ、それ以外は何も・・・特に仕事にも結びつかなくて申し訳ありませんでした」
それから少しだけ頭を下げた。
「そう・・・」
まだ何か言いたそうだった蒼はそのままソファーには座らずに、元座っていたデスクに戻っていった。
「ま、いいわ。何かがあったらすぐに私に報告してね」
と椅子に座る。
羽根も立ち上がると「ご用件はそれだけでしょうか?」と尋ねると蒼は頷いたので
「失礼します」と部長室を後にした。
さっきすれ違った朱鳥が既に何かを報告したのかもしれないが羽根は自分の口からわざわざ上司にプライベートを報告する気はなかった。
昼休みに朱鳥からメールが来た。
『仕事が終わったらここで待っている』と書かれて店の地図が添付されていた。
羽根はとても気が重かったが、無視をすればまた上司にあることないこと報告されても面倒なのでとりあえず行ってみることにした。
朱鳥に指定された場所は普通のカラオケルームだった。部屋番をメールで送ってきたのでそのまま羽根は部屋に直行した。
「良く来てくださいました。どうぞこちらへ」
簡素化されたカラオケルームに不釣り合いな高級スーツを身につけた朱鳥は、羽根を部屋の奥の席へと導いた。
<「恋占い」カラオケボックスにて3へ続く>
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