その晩も泊まっていくように言われたが、羽根はそれを拒んで帰らせてもらった。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
あのままあそこにいたら羽根は壊れてしまいそうで怖くなった。
雫は嫌いではないが、昨日会ったばかりの相手で、同じ男なのに不自然にも程がある。
羽根はしばらく雫には会いたくはないと思った。
自分の人には知られたくないようなことをたくさん見られたのだから当然だ。
問題を抱えているなら、強い精神力でコトに当たるべき日です。また、今日の貴女はいつもより魅力的です。悪い虫が寄って来がちなので充分注意してください。
翌朝羽根は通勤電車に乗るといつもの占いを何気なく見た。
信じたくはないけれどここのところ無視もできないような結果が続いていた。
「おはようございます」
羽根はオフィスに出社すると隣の席に座っていた先輩の山田に挨拶をした。
「ああ、おはよう」
山田は羽根に笑顔を向ける。
「ああ、そうだ美津濃、出社したら部長室に来いって言われてたんだ」
思い出したようにそう付け加えられて羽根はデスクに座って鞄を置いた。
「一体何でしょうか・・・」
「さぁ、お前顔が良いから早速部長に気に入られたんじゃねぅの?」
「それはあまり嬉しくないですね」
羽根は苦笑しながら立ち上がる。
「とりあえず行ってみます」「そうだな」
山田にヒラヒラと手を振られて羽根は部屋を出た。
廊下を歩きながら、部長命令で行った食事での出来事を報告しろと言われたら何と応えようかと悩みながら歩いていた。部長室は羽根がいたオフィスから歩いて一番端にある。廊下の角を曲がって突然の衝撃に羽根は廊下に転がった。
「・・・っ・・・」羽根が転がった衝撃で打った腰に手をあてる。そうじゃなくても中からズキズキとまだ痛むのにと顔を上げて羽根は言葉を失った。
「朱鳥・・・どうしてここに」
彼はレストランで雫の側にいた部下の金田朱鳥だった。
「申し訳ございません。大丈夫ですか?」すぐに右手を差し出されて羽根はその手は掴まずにプイッと横を向いた。
「廊下で考え事をしながら歩いたら危ないですよ。まして・・・」
彼は羽根の腰の辺りを意味深に見つめた。
羽根は自分で両手をついて立ち上がると、彼はただ羽根を見つめていた。
「すみませんあなたのおっしゃる通りです。気をつけます」
と彼の前を通り過ぎようとすると、その手首をしっかりと掴まれた。
羽根は驚いて朱鳥の無表情な顔を間近で見た。
「後で連絡しますので」
そんなことを言われても今日は行く気分ではない。羽根はそんなものは無視しようと考えながら
「いい加減その手を離してくれませんか?」
と周りを気にする。
「あ、そうでしたね。でも必ず来てくださらないと困るので」
羽根の手首を掴んでいた手がキリキリと締めつけられる。
「痛い・・」
「大丈夫まだ折れていませんよ」
感情の起伏さえも感じられずにそう言われて羽根は怖くなった。
ただ頷くと、ようやく朱鳥は羽根から手を離した。
「それでは後ほど」
丁寧にお辞儀をして去っていった。
怖かった・・・
それが羽根の正直な印象だった。
<「恋占い」カラオケルームにて2へ続く>
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