駅までで良いと言ったがもう少しと言われて結局会社の50m位手前で下ろされた。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[1回]
キョロキョロと辺りを見たが見知った顔は見あたらなくてホッとして車を降りた。
丁寧に2人に挨拶すると車はすぐに走り去った。
「ウスッ!黒塗りの高級車に乗ってくるとは、まるで重役出勤だな」
背中から声をかけられて振り向くと雅秀が立っていた。
(よりによって一番見られたくない相手に見られてしまった)
「おはようございます」
「あれは確か月本の常務じゃねぇか・・お前もなかなかやるじゃねぇか」
雅秀の口元が意地悪く上がるのを見て朝から嫌な予感がした。
結局そこから雅秀と一緒にオフィスに向かった。
「ああそうだ、今日はすぐに出るから15分後、下の駐車場で待ってる」
雅秀は自分のデスクについてパソコンの電源を入れると画面を見ながら光長にそう言った。
光長は一度デスクに座ると昨日のチェックを始めながら頷いた。
ここでは彼が指導員だから逆らうわけにはいかなかった。
デスクの書類を片付けるときっちり15分後に地下にあるビルの駐車場に向かった。
雅秀は既に車に乗り込み、エンジンをかけて待っていた。
他にも数台の同じ形の白いセダンがこの駐車場には止まっている。
そのうち数台はもう出かけていた。
「お、やるねぇ時間ぴったりじゃねぇか」
雅秀の言葉に何も応えず顎で示された助手席に乗り込んでシートベルトをした。
「・・っ?!」
いきなり雅秀の左手が光長の股間に触れる。
慌てて雅秀の顔を見ると彼は口元だけを上げて意地悪く笑った。
「で?あそこの常務さんとはどこまで許したのかな?当然このくらいはさせたんだろう?」
その手が光長の雄の形を確かめるようにゆっくりとなで回す。
「やめろ!」
払いのけようとした光長の手を取るといきなりその唇を塞いだ。
噛みつくような乱暴な口づけに一瞬目眩を覚えたが、光長はすぐに雅秀を突き飛ばして
触れている手を払いのけた。
「そんなんじゃない。あの人はお前みたいな下衆じゃないからそんなことはしない」
「ほう、それはお行儀がよろしいようで」
雅秀は叩かれた手でハンドルを掴むと車を発進させた。
光長はこのまま雅秀と2人で車でずっと一緒にいることがかなり苦痛になった。
「お前は甘ちゃんだから俺が世の中の厳しさをよーく教えてやるよ。そのつもりで着いて来いよ」
雅秀の言葉の意味がよくわからない。まるで光長のことを思って言っているような感じだが、実際は自分にとって都合良くしか考えていないに決まっている。
光長は隣の雅秀の顔を睨むと、雅秀はここからはあまり光長をからかわずに真剣に車を走らせた。
「着いたぜ」
高速に乗って1時間くらい車を走らせている間、ラジオから流れてくる音楽に耳を傾け
お互いに一言も言葉を発しないでいたら、雅秀は古い町並みの前でそう言った。
<「弦月」商家にて1へ続く>
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