2人で放ったものも処理もせず乱れた畳の上で転がったままになっている。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
辺りには光長がまとっていたきれいな花柄の着物や非襦袢が脱ぎ散らかされていた。
その一枚を手に掴んでズルズルと引き寄せていくと急にそれを雅秀に掴まれる。
筋肉質な腕が光長からとりあげた着物を一気に引き寄せるとむき出しになっていた滑らかな素肌に掛けた。
少しだけ目を合わせて微笑むと男らしい瞳が光長に近づいてきてその唇を塞いだ。
雅秀の唇の戯れに飽きることもなく応えながらその両腕を首に回した。
一体どのくらいの時間かわからなくなるほど、雅秀と言葉を交わすわけでもない時を過ごした。
「光長眠ったのか?」
ここ元に心地よい声が響く。夢なのか現実なのかわからないまま瞼を閉じていると、その瞼の上にフワリとキスが降りてきた。
「お前は眠ってばかりだな」笑いを含んだ雅秀の声はすごく明るい。
本当のことを聞かなければいけないのだろうか?
芳生と月余とのあれが夢なのか現実なのか・・・・
光長の体から感じる雰囲気では夢だと思えた。
あれほどの攻めを受けながら後から何の痛みも違和感もなかったからだ。
だがそれも異形のもののなせることだとすれば、それはそれで納得できてしまう。
光長は瞼を開いて雅秀の瞳を見つめていた。
「お前は人間だ」
光長の言いたいことを理解していたらしい。
だが、光長はその言葉を聞いて手放しで喜ぶことができなかった。
自ら望んで雅秀と同じ永遠の命を手に入れようと思った。それなりの覚悟の上でここに来たはずなのに、芳生や月余の本当の姿を見て怖くなった。
あれが生きながらえていくための条件だとは予想もしていなかった。
だが、今こうして側にいる雅秀は何の変わりもない。
触れる手も温かい。
「あれは夢ではないけど、俺はお前にそれを注ぎ込まなかった。だから最後のところでお前の不老不死化は防いだ」
「何でそこまで僕を人でいさせる?」
雅秀はまた微笑んだ。
応える変わりに大きな手がふわりと光長の髪に触れる。
頭から輪郭に沿って手を滑らせてその顎をとらえると真っ直ぐに光長の瞳を覗き込んできた。
「お前を誰よりも愛しいと思うからだ」
それならばなおのこと一緒にいる道を選択するはずなのに・・・
光長が不思議そうな瞳で雅秀を見つめている。
「お前は何度生まれ変わっても俺に抱かれる運命だ。どうだそういうのは?お前はいつも忘れているからおれはいつだって新鮮なお前を抱ける。願ったりかなったりじゃねぇか」
本当にそうだろうか?
光長は雅秀の顔をじっと見つめた。
そしてどこまでこの男は光長に甘いのかと、ため息をついた。
考えようによっては何度も同じ男に犯され続けるとは何という憂鬱な人生なのかと思うが、
待っている雅秀の方がどんなに辛く悲しい年月を送っていることか。
生まれ変わった光長に出会ったとしても光長はまたきれいさっぱり記憶がない。
それを考えるとすごく悲しい。
光長の瞳からは涙があふれ出していた。それに気づいた雅秀は手のひらで涙を拭った。
「馬鹿、そんなに怖いか?俺は締まりのいいお前に何度も出会えて幸せだ」
なまじ嘘だとは思えない口調が雅秀らしい、けど・・・・
「僕は歳をとるぞ」「ああ、知ってる」「お前はずっとその姿なんだぞ」「まぁな」
「生活だって変わるんだぞ」「ほう」
「僕が死んでから次に生まれてくるまでの間はどうする?」「・・・・」
雅秀は黙って満開の桜の木を見上げている。
「その時がくるまでは死ぬとか口にはするな」
急に静かな声でそう告げた。
<「弦月」弦月1へ続く>
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読了、お疲れさまでした。
web拍手をありがとうございます。
この前のは誤字脱字が酷いですが、直しません・・・
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