花梨が芳生に呼ばれて部屋に戻って行っても、光長はひとり濡れ縁に腰掛けていた。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
こうしているとずっと昔にとなりで寝ころんでいた雅秀の面影が浮かぶ。
以前夢で見た光景。
そうだあれは桜の咲く夜の出来事だった。
「今夜は満月になるからここで開きかけた桜でも見ながら酒でも飲むか」
聞き慣れた懐かしい声が聞こえた。
光長は空耳だろうかと桜の木を見上げていた視線を庭に戻した。
その瞬間、時間が止まったように目の前が明るく視界が開けた。
「どうしてここへ・・・」
光長は震える声で尋ねると、耳に優しい声が返ってきた。
「何て顔してやがる。そんなに俺に会いたかったのか?お前は淫乱だからな」
雅秀の意地の悪い口元を上げて笑う顔が近づいてくる。
伸ばされた指先が光長の顎をすくい上げて、柔らかな光を放つ瞳が光長の揺れる瞳を映し出した。
たった1ヶ月という時間なのにもう長い時間会っていない気がする。
覗き込まれた瞳を見つめながら光長はハッとした。こんな風に会ってしまったらせっかくの決心が揺らぎそうで怖い。
雅秀の手を片手で払いのけると視線を逸らした。
「何しに来た?」
精一杯の虚勢を張ると、ギシッという音がして隣に雅秀が座った。
何も言わなくても座っている側の体が熱く火照ってくる。今すぐにでも雅秀に抱きついてその唇に触れたいのに、そんなことをしてしまったら最後。せっかくの1ヶ月の辛抱が水の泡になる。頼むから何も言わずに諦めて帰って欲しい。
俯いていた顔をゆっくりと上げながら隣の雅秀の顔を見る。
雅秀の何を考えているのかわからない瞳が真っ直ぐに光長を見つめている。ズキンッと心臓が痛んだ。片手で服の上から胸を押さえると雅秀の光長よりも大きな手がその手を掴んだ。
「お前を買いに来たんだ。どうせ今はお前も体をもてあましている頃だと思ってな」
どこまでも意地の悪い言葉。
だがそれが懐かしいなどと思っている自分はかなりのバカだ。
ためらうことなく伸ばされて腕の中に収まると、雅秀のコロンの香りが懐かしい。
首筋に顔を埋めながら両手で強く抱きしめた。
「ほう、そんなに飢えていたとは。楽しみだな光長」
東屋の戸を開くと中は四畳半の狭い和室になっている。
茶室に使われる以外は殆ど誰も足を踏み入れることもない。
何もない畳の上に座ると正面に雅秀も座った。
今度こそ唇が塞がれる。待ち望んでいた雅秀のキス。
最初は静かに確かめるように重ねられた唇は次第に熱を帯びて激しいものへと変わっていった。
雅秀の舌は別の生き物のように光長の口の中を蹂躙する。
光長も時折苦しさに洩らす声はどこまでも甘い。
雅秀の右手が光長の雄に触れる。もう熱を孕んでいるそこはズボンの中ではちきれそうに硬くなっていた。
「淫乱」耳元で囁かれて更に体が熱くなる。「そんな風にしたのはお前だ」光長も負けずにそう言うと雅秀は「どれ」と言いながら光長のファスナーを開けていく。
雅秀の目の前に晒された雄に雅秀が口づけると更に堅さを増した。
「俺以外にも簡単になびくくせしやがって、どうしてくれようか」
雅秀の意地の悪い瞳が光長を責め立てる。
下肢を晒されて足を閉じようとする光長の太股を掴んで逆に大きく開かせた。
「はっ・・やめっ・・・」
「もうひくついてるぜ」
後ろに隠れている窄まりを暴かれて光長の顔が赤く染まる。
「どうやってお願いした?えっ?」
全てを見透かしているように雅秀は光長に迫る。月余とのことを言っているのだろうか?
光長は首を左右に振ると雅秀は口元を上げて笑った。
「丁度いいものがあるじゃねぇか」
雅秀の視線の先には、庭木に使うためのロープがあった。
ある程度長さのあるそれは光長のような大人の男を全身縛り上げても余るほどの長さがあった。
雅秀が光長を素裸にするのに時間はかからなかった。
<「弦月」早咲きの桜の木の下で3へ続く>
にほんブログ村
読了、お疲れさまでした。
web拍手をありがとうございます。
すごく嬉しいです。
PR