たくさんの人影になっていてよく見えない。
聞き耳を立てて何が行われているのを聞こうと思った。
「さて、皆さん席についてください。今日はおもしろいショーをお見せします」
聞こえてきた声は芳生らしい。
広い部屋らしく、大勢の人たちが席に着くと中の様子が少し見える。
「えっ・・・」
光長をその目に映った光景に思わず息を飲んだ。
大勢の男達は皆目の部分だけ仮面をつけていて顔がわからない。だが、スーツや着物など高価そうなものを身に纏っている。その感じからして皆それなりに地位があるか金持ちらしい。
一斉に中央を向いて円状に席が並べられており、中央には赤く丸いフカフカのラグがひかれていてクッションいくつか置かれている。その上に昼間会った花梨が昔の遊女が着るような飾り襟をつけた緋襦袢を纏って座らされていた。
彼の目には目隠しがされている。
芳生の言葉でショーと言っていたが、何が行われようとしているのか光長もドアに貼り付いていた。その後ろから誰かが勢いよくドアを開いた。
「どうぞお入りください。あなたにもぜひご覧いただくようにと席をご用意しました」
それは桔梗だった。彼はなぜか少しだけ辛そうな顔をしていた。
光長が桔梗の言葉に驚いて立ち上がると一斉に座っていた男達の視線が光長に注がれた。
口々に何か呟いたりため息が出たりしてザワつくと、芳生が話し始めた。
「さて、彼のご紹介は後の楽しみとして、まずはこちらの方を楽しんでいただきたい」
その言葉に男達は中央に視線を戻した。
「本日この花梨は私に黙ってこの男と交わろうとしました。どうせなら本日はお客様が大勢見える日なので皆様の前でその行為をしていただこうと思いまして、こうして後悔することに致しました」
光長は芳生の言葉を聞いて青ざめた。そういえば茶室から戻ったときに雅秀も花梨もいなかった。それはこういうことだったのかと驚いた。雅秀は憎い。
だか、こんなに大勢の人の前で花梨を抱くところを見せられるなんて耐えられない。
光長はやはり部屋に戻ろうとそっと立ち上がるとドアの近くまで来た。
「ああんんん」
突然雄の先を戒めている金属が振動して光長は小さくうめいた。
芳生を盗み見ると彼は光長をじっと見つめていた。
「席を離れてはいけません。それから手を出すことも禁止です。それは後の楽しみとしてとって置いてください」
席を立つなと言う言葉は明らかに光長に向けられていた。
光長は渋々席に戻った。
「お願いです。許してください」
花梨は小さな声でそう言うと芳生はその華奢な顎を掴んで覗き込んだ。
「大丈夫、目隠ししてあげたから怖くないよ。ゆっくり感じてお前は気持ちよくなればいい」
親指でふっくらとした赤い唇に触れてその口を開かせただけで客席からため息が漏れた。
光長からは見えなくても男達の瞳がギラギラしていることは予想がついた。
「さて、君は大丈夫?この状況で使い物にならないと恥ずかしいよ」
芳生は着物姿の雅秀にそれだけ言った。
雅秀はその顔に笑みを浮かべる。
「問題ない」
やはり冷酷な男だと光長は2人を見つめていた。
<「弦月」客間にて3へ続く>
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