色々あったが光長はすっかり会社にも慣れて、出張先へもひとりで出向くことも多くなった。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
雅秀も相変わらず多忙で二人は数日顔さえもあわせないこともあった。
それでもまめな雅秀はいつだって光長を気遣ってメールや電話で連絡をしてきた。
光長が最初に研修を受けたあの商家への出張が入ると、雅秀は自分の仕事の都合をつけて同行しようとした。光長はそれを断った。
「大丈夫、もう対処できるさ」
そういう光長に雅秀が心配していたのは以前、光長を気に入っていた大物の客のことだった。
雅秀もよく知っている大物だからたちが悪い。
あの会社で光長を指名してきたということはそういう意味があると理解できた。
今更光長に体を売らせるような真似はさせたくない。
「お前、またあの客が来たらどうする?」
すると光長はただ笑った。
何も言わなかった。正直対処法なんかなかった。
もちろん自分から好んで何かをしようなんて微塵も考えてはいない。だが、前回のように薬などを使われてしまったら絶対に大丈夫などとは言い切れない。
雅秀には嘘をつきたくない。だから何かが起きてもそれは口にしないつもりでいた。
すぐに忘れられるほど、雅秀に体を預ければいいのだから。あえてそんなことも言う気がないのでただ笑ったのだった。
「お前の覚悟はそれなりにできてるという意味か」
そんな風に理解されても否定はしない。光長はそのかわりに雅秀の腕を掴んで廊下の隅に引っ張ってくる。ここは会社の通路でも死角になっていて、殆ど人が来ることはない。
そこで雅秀に近づくと、光長よりも背が高い雅秀の腕を掴んだまま背伸びをしてその形の良い唇に自らの唇を重ねた。
一瞬驚いた雅秀はすぐに光長の腕を掴み返して壁に押しつけた。
片手で光長の顎を掴むと強く押して唇を開かせる。自然に開いた唇の隙間に雅秀の舌がスルリと入り込むとお互いの舌を絡め合いながら、雅秀の背広の襟元に手を滑り込ませてその逞しい胸に触れた。雅秀も光長の背中から腰へと片手を滑らせて丸いラインにたどり着くと何度も撫でる。こんなことで理解してもらえるのならと思う。いや、多分雅秀は充分理解している。
次第に体の力が抜けそうになるのを雅秀の胸を強く押しやって体を離そうとすると、逆に抱き込まれていた腕で強く引き寄せられた。
「もう・・」
上気した潤んだ瞳で雅秀を見つめると鋭い視線で見つめ返された。
「仕掛けてきたのはお前じゃねぇか。ここんとこお前としてねぇからたまってるんだぜ」
耳元で囁かれてもそれ以上はここでは無理だ。
「じゃあせめて終わるまで待て、うちに帰ってから・・・」
「もう待てねぇし、場所だけ変えてやるよ。会議室なら空いてたな」
雅秀は昼間のオフィス、それも会議室でしようとしている。
光長は呆れた。一度体を離した雅秀は光長の腕を掴んで廊下を早足で進んでいく。
何人かの人にすれ違っても、皆あまり関心をみせずに通り過ぎていった。
程なく会議室のドアに使用中という札を付けて、雅秀は部屋にはいるとカチャッと鍵をかけた。
確かにここなら誰も入っては来られないけれど、他にもたくさんの会議室が並んでいるから大声を出すと全て聞こえてしまう。
それでもそのまま会議テーブルに押し倒された光長は抵抗しなかった。
<「弦月」会議室にて2へ続く>
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