月深は顔を上げて竜一を見上げた。
「フンッ、保釈金はお前が用意したのか?余計なことしやがって」
竜一は顔をしかめて嵐を見た。
優翔は月深をかばうように竜一の前に出た。
「俺が用意したんだよ」
「優翔?」
月深は不思議そうに優翔を見つめた。
月深の知っていた優翔は借金を抱えて半ばホストに売られてきたようなものだったのに、そんな金を用意できるなんて思えなかった。
しかし、優翔は今では人気ホストだった。
太陽の保釈金を払うくらい何ともないほど稼いでいた。
優翔は月深にいつか恩返しをしたいとずっと考えていた。
だから嵐に月深の家のことを聞いたとき、ようやく月深へ恩返しができると思ったのだった。
月深のことを知ってから嵐に弁護士を紹介してもらって、手を打ったのだった。
それには少し時間がかかった。
その間に月深がいなくなったのは計算外だったが、早く連れて帰りたい。
「おっと・・ここまで来ておいておとなしく帰してもらえるなんて都合の良いこと考えていませんよね」
竜一が優翔の近くに顔を寄せると後ろにいたさっきまで優翔を拘束していた男が近づいてくる。
彼から逃れようと優翔は月深の手を掴んで素早く離れた。
「猿島のあなたまでそう都合良く行くなんて思っている訳じゃないですよね」
竜一の後ろにいた男は今度は和真の腕を掴んでいた。
「いいからかまわず早く行け!俺は大丈夫だ!!」
「うるさいですね」
竜一は和真の頬を思い切り叩いた。
「そうでした月深は美しいから絶対にこんなことできませが、あなたなら何をしてもそれはそれで・・」
と竜一はニヤリと笑う。
嵐はギリッと歯をくいしばり
「卑怯な奴め」
と動かなかった。
月深は優翔の手を離した。
「悪いけど、俺はこれでもヤクザでね」
口元を上げて靴の底に仕込んでいたナイフを取り出すと自分の首に押し当てた。
「月深?!」
優翔が慌てて手を伸ばす。
「よせ、月深」
竜一が月深に気を取られたスキに思い切り嵐が和真の後ろの男を蹴った。
同時に和真ももうひとりの男のスキを着いて蹴り飛ばした。
「月深!!」
優翔は月深を抱き寄せてそのまま賭けだした。
後ろから嵐と和真も走ってくる。
竜一は倒れている大男が邪魔でなかなか部屋から出られなかった。
その間に4人は止めておいた車に乗って追っ手の中を車で突破した。
門までの長い道を走り閉まる寸前の門を突破した。
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