「兄貴嬉しいな、俺のためにヘリで会いに来てくれるなんて。忙しいんだね。じゃあ早速用件に入ることにするよ」
とベッドルームが見えないように移動して客間のソファーへと連れてきた。
月深がこの兄をうまく利用しているのが一目でわかった。
「まぁ、慌てなくても俺の最優先はお前だから安心しろ。お前のためだったら1晩でも2晩でも予定を開けてやる」
と頬を赤くする太陽はどこか卑猥だ。
「ありがとう兄貴」
チュッと頬にキスする月深に太陽はもう何も見えないし聞こえなくなったに違いない。
「いいんだ、何でも言うことを聞いてやるから言ってみろ」
「うん、じゃあ俺に3億円頂戴」
「なんだそんなことか、わかった。すぐにお前の口座振り込ませておく」
とすぐに携帯電話を取り出すと部下に指示を出す。
「俺だ、親父に取引先に3億送金するからといって金をもらえ。つべこべいってんじゃねぇ!!黙ってそれを受け取ったら月深の口座へ振り込んどけ!!わかったかすくにしろよ!!俺が帰るまでにやってなかったらお前の腕はないと思え」
急に物騒な会話をすると電話を切った。
ニコッと月深を見て微笑むと
「兄貴がすぐに月深たんに振り込ませたから安心して良いぞ」
これ何だろう・・・甘すぎる・・・
優翔はそんなやりとりを呆然と見つめていた。
「兄貴ありがとう、大好き」
という月深に手を伸ばそうとした太陽からスッと離れると月深は優翔の側に来た。
「そろそろ俺たち出かけるから、兄貴はゆっくりしていく?」
笑顔でさりげなく追い出そうとする。
「ああ、そうだ時間がなかったんだ」
と立ち上がると太陽も名残惜しそうに何度も月深を振り返った。
「それじゃあ兄貴気をつけてね」
溢れる程の笑顔を向けて手を振る月深に太陽も目尻を下げて応えた。
来たときと同じくらいの早さで太陽が去って行った。
優翔はほんの5分か10分の出来事に呆然と月深を見つめていた。
「お前、ヤクザじゃなくて詐欺師の方が向いてるって言われたことねぇか?」
そんな優翔に月深は笑顔で
「嫌だなぁ、どっちも酷い言われようだな。少なくとも俺は君に3億を貸そうとしている人間なんだけど・・・」
そんな風に言われると優翔も頭が上がらない。
「ごめんなさい。俺が悪かった。月深様なんなりと俺に命令してください」
月深はその状況を楽しむ。
「うん、じゃあさキスして」
「お安いご用」
と優翔が月深の肩を抱いた。
真面目に月深の瞳を見つめると優しく見えたその瞳の奥に凍り付くような冷たさに気づいた。優翔は間近で動きを止めた。
「どうした?」
じっと瞳を見つめたまま動かない優翔に月深は口を開いた。
優翔は両手でそんな月深の頬を包み込んだ。
「お前、何考えてるの?」
「え?」
<「更待月」月の石13へ続く>
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