シャンパンを飲み干してから水割りに変えた月深
月深はこう見えてもアルコールは強いらしい。
ボトルが空になっても潤んだ瞳が増したくらいだ。
夜というか日付が変わって、もう残りの客も少なくなっているらしい。
店のフロアが静かになってきた。
「月深、まだ飲むの?」
月深といられるのは嬉しかったが優翔はいつまでも色あせていくこの空間にはいたくなかった。
月深はがらんとなっていくフロアを見てから
「そろそろ出ようか・・・ホテル?」
あたりまえのように優翔のところに行く気満々だ。
「今日はもう帰れ」
「そうか・・・」
月深はあっさりと答えながら立ち上がる。
だが、飲み過ぎたせいか、それとも動揺したのか足下がふらついた。
「おっと、月深・・・」
優翔が月深の体を支えながらその顔を見下ろした。
このままいると離れられなくなりそうで、せっかく決意した気持ちが揺らぎそうで嫌だった。だから月深に黙って出てきたのに・・・
吸い込まれそうに顔を寄せた優翔は、はっとして視線を逸らした。
このままじゃ月深のペースに巻き込まれるところだった。
「迎えは呼べるか?」
「ああ、大丈夫だ・・・」
月深らしからぬ寂しそうな顔を見ないように優翔は離れた。
「電話貸して」
それでも右手を差し出すと月深はポケットから携帯電話を取りだした渡した。
「あ、篠崎さん?新宿のエルドラドまで月深を迎えに来てください。いいえ大丈夫です。ちょっと酔っているくらいで、ええ。ではよろしくお願いします」
優翔が電話を切って月深に返す。
「あと20分で来るそうだ。俺はコートを取ってくる」
その言葉に月深が顔を上げた。
「えっ?優翔も来るの?」
優翔は無言で頷くと席を出て行った
<「更待月」月の光10へ続く>
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