良く磨かれた黒塗りの高級車が煌びやかなネオンの町を抜けていく。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
月深の隣には優翔が乗っていた。
ずっと月深の手を握っている。
『どうして?』と言った月深に『俺が客を見送るのはまだサービスの一部だし、お前だけ冷たくするわけにもいかねぇしな。けど、月深これは特別じゃねぇ。俺はあの店にいる限り他の客とも同じ事をするんだ。それでもいいとお前が言うなら、俺はお前について行ってやる』月深はそれでもいいと頷いた。
酷なことを言ってしまった。
でも、そのくらい言わないと月深は優翔のところへ通ってくるに違いない。
あの店は鳥取組とは敵対する猿島組のものなのにそこに単身通わせるのは好ましくはない。
いくら客だって嵐も良くは思わないに決まってる。
「月深・・・」
「なぁ、もう店には行かないから今夜は泊まってくれないか?」
車のシートに深く体を埋めながら月深が優翔にもたれかかってきた。
月深は高価な猫の様だ。
こちらから近寄れば逃げるくせに、こっちが知らん顔すればすぐに機嫌をとろうとする。
だからってべたべたしたらまた逃げるくせに、放っておくとすぐに拗ねる。
高値の花という言葉がよく似合っている。
優翔は右手で月深の頬に触れた。
「泊まってどうする?」
わざと意地悪なことを聞く。
「しても・・いい」
プイッと顔を窓の外に向け、流れていくネオンの宝石に照らし出された。
色とりどりに照らしだされた顔は赤くなっているのか・・・
そんな顔を見るのが好きだから俺は月深を大事にしたいと思っていた。
<「更待月」月の光11へ続く>
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