楓は寂しさのあまりやけになっていると、知らない男からいい憂さ晴らしがあるからと
賭博場に連れて行かれた。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[1回]
いつの間にか賭け事に興じているうちに膨大な借金を作らされた。
この男は最初から楓の外見に目をつけていたらしい。
楓は元々男としては線が細く、肌の色も白く顔の頬の辺りは女性のように
ふっくらとしていてついつい触れたくなるような若者だった。
その男は楓を売ればきっと高く売れると思っていたらしい。
最初からそのつもりで楓を誘ってきて陥れたのだった。
楓は借金の代わりだと言い含められて簡単にその身を遊郭に売られていった。
大好きだった兄の雅秀にも会うことも許されず・・・
知らない男から兄にしか触れさせたことがない秘められた部分を暴かれた。
「お前はもう男を知っているのですね。それならすぐに店に出ていただきます」
この店の経営者である芳生の言葉だった。
最初客を取らされるといわれた晩に逃げだそうとしたら、その客に見つかった。
客は店には内緒にしてやるからその代わりにと言って楓を縄で縛った。
ところがこの客は特殊な性癖を持つ客だった。
楓はいきなり縛られて体中に痣ができてしまうほど酷い目にあわされた。
結局それは店に知られることになり、その客は2度とこの店への出入りは禁止された。
楓は最初からそんなひどい目にあわさられて、精神的にもダメージを受けていた。
そんなときに店の経営者の芳生は楓に話してくれた話があった。
「昔この店でとても売れていた傾城がいたんですが、その方は何があっても絶対に唇だけは汚さなかった。
どうしてだかあなたにわかりますか?」
「唇だけがその傾城の心だったんです。いくら体中を誰かにゆだねてもその心だけは誰にも渡さない
というプライドだったんですよ」
すると楓は芳生に口づけてきた。
驚く芳生に楓はやっと笑顔を見せた。
「それじゃあ俺の心はあんたに預ける。俺が自由になったときにそれは返してもらうよ」
楓はそうして直ぐにトップに上り詰めて傾城になった。
その唇は兄にだけ、もっと別に好きになれる相手にだけ許そうと決めていたのだ。
いつか自由になったときに汚れていない場所があるというプライドだけを胸に傾城として
何人もの男の腕の中に抱かれてきたのだった。
それがなぜか桔梗に許してしまった。
きれいになっている布団の上で楓は一筋の涙を流していた。
桔梗が可愛くてその兄のように見守っているつもりだったのに、
桔梗の意外な行為に心の底にあった寂しさに火がついてしまった。
早くこの火を消さなければ火傷してしまう。
楓はしばらくそのまま伏せっていた。
<「桔梗」12へ続く>
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