いつものように桔梗は楓の支度を手伝う。
その黒くて美しい髪を剥くとその髪に指を絡めた時のことが甦る。
楓の吐息が虚ろに潤んだ瞳が桔梗の全身を熱くする。
鏡に映し出された楓の姿を熱い視線で見つめていると
楓は桔梗の視線に気づいて微笑みかけてきた。
「桔梗早く忘れることだ。私も忘れるから。それよりお前の水揚げの支度のことでも考えないといけないね」
水揚げという言葉に桔梗がピクリと反応した。
あんなことを自分がやられるのかと思うと怖くなった。
だが楓の気持ちよさそうな顔を思い浮かべるとその顔を他の誰にも見せたくなくなってくる。僕にだけ見せてくれればいいのに・・・
そんな思いで鏡の向こうに視線を戻すと真っ直ぐに楓の視線が桔梗を見つめていた。
「楓さん・・・僕」
「ダメだよ桔梗、お前は今いけないことを考えていた。今日はもう私の側にいなくても良いから椿の手伝いをしてきなさい」
椿というのは楓と同じく売れっ子の傾城だ。楓も今日は桔梗の顔を見ているのがつらいらしい。そう言って別の禿に身支度の手伝いを言いつけたのだった。
桔梗は仕方なく楓の部屋を出ると椿の部屋に向かった。
「えっ、2人の客?!」
「椿姉さん声が大きいです。はい、どうやら桔梗は決まったようです。て私も驚きました。」
「・・・!」
椿の部屋から聞こえてきた楓の噂話に桔梗は聞き耳を立てていた。
「それで?」
「最初から2人なんてあるんですか?」
すると別の禿らしい子の声がした。
「2人って何をするんですか」
「そりゃあ片方は口でもう片方は下の口で受けるんですよ。楓は得意だからきっとその下にいる桔梗も得意なんじゃない。普通はないでしょ」
そう言って椿と周りの若い子立ちが笑っている。
桔梗は呆然と立ちつくしていた。
「ひどい・・・そんなことない」
<「桔梗」13へ続く>
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