マラークは顎をカミールの肩に乗せた。
どうしてそんなことが言えるのかわからないが、この王子様にそう言われるとカミールは不思議と安心した。
だって今この人は売られようとしている。
どこに売られていくのかはカミールさえも知らないが、この容姿からすると相当の高値で売れたのだろう。
カミールのように酷い主でなければいいのだが・・・
「大丈夫だよ」
もう一度マラークはカミールに言った。
カミールはマラークの手首を拘束しているロープを解きはじめた。
「いいの?そんなコトしたら私は逃げるかもしれないぞ」
マラークが微笑んだ。
それに対してカミールは首を横に振った。
「逃げないでしょう。俺にはわかるんだ。あんたプライドが高いけど、人を困らせるようなことはしない。だってあのナジムのかわりにこんなところまで連れてこられたんだからね」
マラークの腕が久しぶりに自由になった。
マラークは手首をさすりながら
「サンキュ」
とウィンクをした。
カミールは戸惑ったように立ち上がった。
「あんたの主がいい人であるように祈っておくよ。俺にはもうそれ以上できることはないから」
とマラークの部屋から出て行った。
入口にはしっかりと外から鍵をかけた。
「私を信じているというわりにはしっかりと鍵をかけてるし」
マラークはため息をついた。
まぁ、鍵がかかっていなかったとしても船の上では逃げようもない。
本当はマラークはあの見飽きた景色から脱出できたことにワクワクしていた。
でも・・・
「アサドは今頃カンカンだろうな~ナジムは無事なのかな?きっと私に似ているからアサドも甘焼かしているに違いないよな」
マラークはニッコリと笑った。
窓から海の遙か向こうに浮かぶ大陸を眺めていた。
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