ドアが閉まる音がした。
カマールが出ていったらしい。
ナジムはアサドの腕に抱かれたまま眠っていた。
アサドの心音を聞いているとホッとした。
ようやく手に入れた安心できる場所だが、どうせ長くは続かない。
自分は奴隷なのだから。
本物の王子が戻ってくるまでの身代わりでしかないことは
忘れてはならない。
ナジムは目の前で瞼を閉じているアサドの顔を見つめた。
でも、今だけはこうして甘えていてもいいんだよな。
唇を合わせてキスをする。
「これはなんです?」
眠っていたと思っていたアサドの声がした。
「あの・・」
ナジムはびっくりして体を起こそうとしたところでアサドに手を掴まれた。
「だから中途半端なことは最初からなさらないでください。もう一度きちんと」
アサドがじっとナジムを見つめている。
こんな風に見られててできるわけなんかない。
起きてたって知っていたら最初からキスなんかしなかった。
いつまでたっても動く気配がないナジムにアサドはため息をついた。
アサドはナジムの顎を掴む。
そのまま唇を目の前まで持ってきた。
「さぁ、どうぞ。ここまでさせておいてできませんでしたなんて相手に失礼だと思いませんか」
アサドは目の前で自分の目を閉じた。
ナジムはもう一度そっと唇を合わせて離れようとすると
背中にナジムの手が回って離れなくなった。
唇の間からは舌が入り込んでナジムの舌を舐めた。
「ん・・ふっ・・・」
アサドはナジムの舌を絡め取るようにキスをした。
口の奥まで奪い尽くすような強引な口づけ。
でも、体中が熱くなっていく。
アサドに全身を預けたくなって来たくなるようなキス・・・
ぐったりと体を預けているとようやくアサドの唇は離れていった。
「次からはこんな感じでお願いします」
たった今うっとりしていたナジムは急に現実に引き戻されたような気がした。
「・・・」
まぁ、いつかはできるかもしれない。
読了、お疲れ様でした。
web拍手をありがとうございます。