アサドに何度も貫かれて自分も何度も達したおかげで、カミールは立って歩くことさえ辛かった。だが、その姿であえてマラークの前に出ることに興味を持った。
「大丈夫、今日も十分歌えるよ」
と微笑んだ。
マラークの前に立って窓の縁から外を見た。
その向こうにアサドが庭の手入れをしているのを見付けると、わざとアサドのいる方向に向かって歌い出した。
いつにも増して妖艶で艶っぽい歌声に、外で作業をしていた他の従者達までマラークの部屋を見上げるとうっとりと聞き惚れた。
アサドは少しだけ苛立たしげに眉を動かした。
だが高い場所にあるマラークの部屋からそんな表情が見えるはずもなかった。
マラークはベッドに横になって目を閉じながらカミールの歌を聴いていた。
ところが突然その歌が止んだ。
マラークは何事かとカミールの方を見た。
カミールはじっと窓の外を見つめている。
マラークがゆっくりとベッドから体を起こして近づこうとすると、カミールはそれに気づいて部屋の中のマラークを見た。
「マラーク様、とても気持ちの良い風が吹いてきて思わず止まってしまいました。こちらにどうぞ」
と自分の腰掛けている窓の縁にマラークを手招きした。
マラークもカミールに導かれるまま隣に座る。
「マラーク様ちょっとじっとなさってください」
「ん?なに?」
カミールはマラークの後ろの壁に手をつくとマラークの髪についていた糸くずを取った。
「ゴミが・・・」
「ありがとう」
ふたりが向かい合って笑顔を交わす。
下から見上げていたアサドにはまるでふたりがキスをしてその後に見つめ合っているように見えた。
アサドの手に握られていたバラの刺で手のひらから血が流れる。
しかしそんな痛みよりもマラークがカミールに誘惑されたと勘違いしたアサドはプイッと庭を後にした。
夜になってマラークが眠りにつくのを確認したアサドは、自分の部屋へと戻っていった。
ところが部屋の前には、昨日散々泣かせたはずのカミールがいた。
その顔を見た瞬間、アサドには昼間見た光景が浮かんだ。
カミールの襟首を掴み上げると壁に押しつけた。
「マラーク様に何てことを・・・」
しかしカミールはただ笑っていた。
まるでアサドにいたぶられるのを予想でもしていたように妖艶な瞳でアサドを見つめた。
アサドはそのまま部屋にカミールを連れ込んで部屋の中へ放り込んだ。
アサドに押されて床に倒れ込んだカミールにアサドはいきなりその長い服の裾をめくり上げた。
スラリと長い足が洗われるとアサドはその足を伝ってその根元に触れた。
「手を出せば潰すと言ったはずだが」
苦虫をかみつぶしたようなアサドの顔に、カミールは緊張感のない顔でアサドを見ている。
「だから、僕は何もしてないけど?あれはマラークから・・・」
そこまで言ったところでアサドはカミールの服を引き裂いた。
「ふざけるな!!お前なんか壊してやる」
その言葉にカミールはアサドの首に両手を回す。
「いいよ、たくさんしてよ・・・あんたのが忘れられないんだ」
アサドの耳元にきれいな声が囁いた。
アサドはまるで狂ったようにカミールを床に押し倒した。
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