声は虎角のものだった。
親しげにかけられた声だが、一分の隙もないその声に嵐も緊張した顔をしている。
「うちの知り合いが世話になってるらしいじゃねぇか」
嵐の言葉に竜一は笑った。
「さて、おたくの組からは誰も預かったつもりは無いはずだが、うちの若いのがまた勝手に動いたかな」
嵐はそれでも引こうとはせずに窓の奥に顔を寄せた。
「おっと、悪いがプライベートでね。いくら猿島さんでもちょっとお見せできませんね」
竜一が窓を全身で塞いだ。
その動きを見て優翔は月深が間違いなく乗っていると確信した。
「すみません、あのぜひ見せてはいただけないでしょうか?」
嵐の後ろから優翔がゆっくりと歩を進めてきた。
丁寧に竜一に頼んでみる。
竜一は一瞬ニヤリと笑った。
「ほう、どうしても見たいと?」
優翔はコクリと頷いた。
「まぁ、せっかくだから君に見てもらうのも悪くはないかもしれないなぁ、どうだ?」
竜一が奥に座っている誰かに確認をする。
「嫌だと言っているが、私としては嫌がれば嫌がるほど楽しくてね」
どこまでも捻くれた性格の男だと嵐も優翔も思った。
「じゃあ、君達の車で私の家まで着いてくるといい」
竜一はそのまま窓を閉めると程なく車は動き出した。
和真も嵐と優翔を乗せると車を走らせて門の中へと進んでいった。
虎角の敷地内は広くあちこちに監視カメラが設置されていた。
「きっと月深のことに違いない」
優翔は右手で拳を作ると自分の膝を叩いた。
「もうすぐだ」
嵐が優翔を慰めるように声をかけた。
<「更待月」月の砂28へ続く>
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web拍手をありがとうございます。
地震の多い中ようやく引っ越しが終わりました。
無事ネットが繋がったのでようやく更新できました。
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