優翔が嵐と一緒に部屋に戻ってくると、もうどこにも月深の姿は見あたらなかった。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[11回]
それでも懸命にその姿を探し続ける優翔に和真が
「早く行けば間に合うかもしれない」
という言葉でようやく優翔は部屋を出た。
エレベーターを下りるとすぐに駐車場に向かった。
月深を乗せた虎角の車はすでに出てしまった後らしい。
駐車場には中央に止められた嵐の車と奥に数台の従業員の車らしい地元ナンバーのモノしかなかった。
「行くぞ」
和真が先に運転席に乗った。
続いて嵐も後ろに乗ると優翔も助手席に乗り込んだ。
「まだ、そう遠くへは行ってないとは思うが、まぁ行き先は大体わかるから慌てることもねぇか」
嵐はシートに座ると足を組んだ。
「行き先って?」
優翔がミラー越しに尋ねると嵐は笑った。
「虎角だろう」
「なるほど、もう戻るしかねぇな」
それを聞いて和真が車を動かした。
こんな時だというのにホテルの従業員がホテルの玄関に並んで嵐達の車を見送った。
月深はどんな思いで竜一と出ていったんだろう?
優翔は流れる景色を眺めながらそんなことを考えていた。
「なあ、優翔。お前いい加減鳥取に関わらない方がいいんじゃねぇか?」
嵐が煙草に火を付ける。
優翔は窓の外を見つめたまま
「今更・・・俺はあいつに恩返ししたいだけだ」
和真は黙って運転している。
「あの虎角って奴はどうも好かねぇ。この業界でもあいつのやり方は強引で一目置かれてたが、鳥取太陽が捕まっていない今、あいつに太刀打ちできる男はまずいねぇ。強いて言えば月深はそのうちの一人なんだが、月深はあいつに相当甘く見られちまってるからな」
「月深ならどうにかできる」
優翔はようやく振り向いて嵐を見つめた。
「ああ見えてもあいつは強い」
その言葉に嵐は笑った。
「よく知ってるじゃねぇの」
<「更待月」月の砂24へ続く>
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