結局最後までできなかった。
それでもまるで繋がったようにお互いが愛しく感じられた。
ベッドに横になってままそこから出ることがためらわれる。
そういえば昨日、月深は竜一のところから逃げ出したというのにホテルの中はやけに静かだった。
優翔と逢えたことに自分が逃げてきたことなどすっかり忘れていた。
正確には忘れていたわけではなく、どうでも良いとさえ思えだのだけど・・・
それに嵐達もやけに静かだ。
ホテル内に皆まだいるはずなのに、月深はまだこんなところに優翔といても良いのだろうか?
「どうしたの?」
月深が思い悩んでいると口づけをしようとした優翔が止まった。
「逃げなくてもいいのか?」
自分は太陽のことがあるから逃げるわけにはいかないが、優翔には何の関わり合いも無いことだ。せっかく落ち着いた優翔の人生をまた狂わせるようなことはしたくない。
月深は優翔から避けて起き上がった。
すると優翔はクスッと笑った。
「月深を迎えに着たのに、どうして俺一人で逃げるの?」
月深は背中を向けたまま立ち上がる。
日の光に透けて白い肌のところどころ赤い痣が見えた。
優翔は眩しそうに月深の背中を見つめる。
「俺は生まれたときからこういう世界からは逃げられない。けど優翔は違う。だからもう優翔はこれ以上足を踏み入れない方が良い」
月深の背中が僅かに震えている。
優翔もゆっくりとベッドから出ると月深の背中を抱きしめた。
「決めたから」
月深の背中にじわりと優翔の温もりが伝わってくる。
「俺は月深に助けられて、今度は俺が月深を助ける番だと思ってる。それが例え修羅の道だとしても、俺は逃げないって決めたから」
優翔の言葉に月深の肩が更に大きく震えだした。
月深の手が優翔の回された腕に添えられる。
「ありがとう・・・・」
本当はすごく好きだから、離ればなれにはなりたくなかった。
だから優翔の言葉が体中に染み渡る。
何て軟弱なんだろう・・・・
月深は苦笑した。
<「更待月」月の砂22へ続く>
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