窓の外に広がる湖とその周りに点々と浮かぶ光を眺めながらグラスを傾けていた。
部屋では今頃嵐と和真が水入らずで楽しんでいるのだろう。
全く何のためにこんなところまで来たのかわからない気がして、優翔は小さくため息をついた。
何気なく振り返って優翔の視線が、ないはずのものをとらえて釘付けになる。
「つきみ?!」
小さく呟くのと動き出すのが同時だった。
素早くエレベーターホールの前に走る。
「えっ?!」
驚いたのは優翔だけではなかった。
目の前で裸同然の男が呆然と目の前にいる優翔を見上げている。
幸いシーズンオフの観光地ではホテルを利用する人も殆どなく、月深の姿を見る者もいなかった。優翔は素早く自分の着ていたカーディガンを脱ぐと月深の素肌に掛けてやる。
「体が冷たい。風呂に行って温かくしよう」
優翔はカーディガンをかけた月深の肩に腕を回して歩き出した。
月深はカーディガン越しに優翔の温もりを感じてその手に自分の手を乗せた。
それだけで優翔には何かが伝わったのか優翔の体が月深に寄せられて全身に優翔の体温を感じた。
エレベーターが開いて乗り込むと優翔は大浴場のある階のボタンを押した。
扉が閉まると同時に月深の体は優翔の腕に抱き寄せられていた。
噛みつくようなキス
でも嫌じゃない・・・
優翔の唇・・・
月深はこの感触が好きだった。
<「更待月」月の砂15へ続く>
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